研究課題/領域番号 |
15K05466
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
服部 徹太郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (70241536)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイブリッドカリックスアレーン / 金属イオン認識 / 溶媒抽出 / 金属錯体触媒 / 超かさ高配位子 / パラジウムLewis酸 |
研究実績の概要 |
1.高選択的金属イオン抽出剤の開発:カリックス[4]アレーンの向かいあう二つのヒドロキシ基をホスホノ基に変換したOH-PO(OH)2型配位子 (1)が,分離の難しいZr4+とHf4+の混合水溶液から,実用的な高濃度塩酸酸性条件下でZr4+を選択的に抽出することを見出した。この際,抽出化学種は1(L):Zr4+=1:1であり,低濃度塩酸酸性条件下では選択性が発現しないことから,LZrClnH(n-4)の構造をとっていると考えられる。また,配位子1と同様に二つのヒドロキシ基をシアノ基に変換したOH-CN型配位子(2)の合成にも成功したが,期待したAg+に対する抽出能は低かった。 2.ホスフィン配位子の合成と触媒反応への応用:カチオン性Pd(II)錯体PdL(MeCN)2(BF4)2(3a, L=OMe-PPh2, 3b, L=OBn-PPh2)のLewis酸としての性質をBINAPやdpppなどを配位子とする既存のPd(II)カチオン錯体と比較したところ,ハードな酸素に対する親和性は低いが,ソフトなアルキンに対する親和性が高いことがわかった。錯体3a,bは,種々のアルキニルアミンやアルキニルカルボン酸の分子内ヒドロアミノ化,ヒドロ/オキシカルボニル化を触媒した。また,かさ高い単座ホスフィン配位子としての性能向上を目指して,強い配位力が期待できるアルキルホスフィン類の合成法を検討し,OMe-PBu2の合成に成功した。 3.高感度蛍光性金属センシング素子の開発:ハイブリッド型カリックスアレーンOH-CHOに2モル当量の1-アミノピレンを縮合してジイミン4を合成し,金属イオンの蛍光センシングを試みた。ジイミン4は蛍光を発しないが,Hg2+により特異的に蛍光を発するturn-on型センサーとして働くことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1については順調に進んでいる。課題2については,カチオン性Pd(II)錯体PdL(MeCN)2(BF4)2(3a, L=OMe-PPh2, 3b, L=OBn-PPh2)が,分子内ヒドロアミノ化,ヒドロ/オキシカルボニル化の良好な触媒となることを確認したが,BINAPやdpppなどを配位子とする既存のPd(II)カチオン錯体との差別化が未だ十分にできていない。また,合成したアルキルホスフィンOMe-PBu2のPdに対する反応性がOMe-PPh2と予想以上に異なり,カチオン性錯体の合成と触媒活性の評価が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.高選択的な金属イオン抽出剤の開発については,本年度の研究でOH-PO(OH)2配位子 1が,ハロゲンが配位子した中性化学種ZrClnH(n-4)とHfClmH(m-4)の識別に有効であることを見出したので,他のハイブリッド型配位子を含めて,中性化学種の選択的抽出について重点的に検討する。2.ホスフィン配位子の合成と触媒反応への応用については,カチオン性Pd(II)錯体3のソフトなアルキンに対する親和性と立体効果を利用した高活性,高選択的な環化反応の開発を目指す。また,OMe-PBu2のPd(II)錯体を合成し,鈴木-宮浦反応や宮浦-Michael反応により触媒としての性能を評価する。3.高感度蛍光性金属センシング素子の開発については,当初は,溶媒組成や添加物により検出金属をスイッチングできるセンサーの開発を目指していたが,Hg2+による発光のメカニズムを調べたところ,反応駆動型(イミンの加水分解)であり,検出金属のスイッチングは困難なことがわかった。しかし,共存する金属イオンに阻害されずHg2+のみを高感度で検出できる性質は,ハイブリッドカリックスアレーン特有のものであることがわかったので,これまでの成果をまとめて課題3は終了する。4.X,O-ハイブリッドカリックスアレーン類の新規合成法の開発については,1,2の研究において,必要な場合に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
触媒反応の検討が予定よりも遅れており,基質や触媒の合成にかかる消耗品費に未消化分があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定した基質や触媒の合成にかかる消耗品費として使用する。
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