研究課題/領域番号 |
15K05467
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 恵一 東北大学, 理学研究科, 助教 (80374742)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 単分子磁石 / 磁気異方性 / 核磁気共鳴 / プロトン / 配位子場 / フラーレン / カーボンナノチューブ |
研究実績の概要 |
申請者はポルフィリン系単分子磁石(SMM)-ナノカーボン材料からなるハイブリット化合物を合成し、その構造と物性の相関を明らかにする。平成28年度は、ホスト分子ポルフィリン積層型テルビウムトリプルデッカー錯体[(Por)Tb(Pc)Tb(Por)](1)の磁気異方性を調べるため、1H-NMRによる磁気異方性解析を試みた。 錯体1における2つのTbに対する配位環境はSP(Square prism)であることから、非対角化項(B44, B64)の配位場パラメータの影響が磁気特性(磁気異方性)に顕著に現れる。従って、配位環境の異なるTb二核錯体について1H-NMR(核磁気共鳴分光法)の手法を用い、アキシャル成分の磁気異方性テンソル(χax)をTbイオンに対して幾何学的に同じ位置のプロトンについて算出し比較することで磁気異方性の大小関係を見積もることが可能である。その結果、積層角が32度の[(Pc)Tb(Pc)Tb(Pc)]錯体(2)と比較して、錯体1はχaxの値が40%程度小さい値を示した。以上の結果は、磁気特性から得られた結果と矛盾しない。 配位環境を自在に制御することができれば配位子場を利用した単分子磁石挙動の制御が可能となる。可逆的な分子構造変化に伴う単分子磁石のスイッチングに繋がる結果が得られた。 また、単分子磁石(SMM)を多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)に毛細管法を用いて内包した。内包状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認した。 交流磁気測定では、Dyアセチルアセトナト錯体の磁化率はMWCNT内部でも明確な周波数依存性を示したことから、このハイブリッドデバイスはスピントロニクス材料としての可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホスト型単分子磁石(1)の配位環境をC60を用いて変化させることに成功した。その結果、磁気異方性が変化し、単分子磁石特性が制御可能であることがわかってきた。磁気異方性の配位環境依存性については、核磁気共鳴分光法の手法を用い比較することができた。配位環境に起因する磁気異方性の評価が可能であることから、1とC60錯体(3)についても評価を行う予定である。また、C70やC84など各種フラーレンと錯形成することも分かった。現在、単結晶を作製し、単分子磁石特性や磁気異方性についても研究を進めている。また、単分子磁石をカーボンナノチューブに内包させることにも成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも述べたが、フラーレンとの超分子錯体形成に伴い、磁気異方性が変化し、単分子磁石特性も変化することがわかった。C60以外の様々なフラーレンとの組み合わせにより、配位環境を微妙に制御することで単分子磁石特性を制御することが可能であると考えられる。また、カーボンナノチューブに単分子磁石を内包できるため、内包前後での磁気特性を詳細に調べることが可能である。研究計画に従い、単分子磁石挙動を示す希土類内包フラーレンやフラーレンのアニオンラジカル類との超分子錯体を合成する予定である。
|