研究実績の概要 |
はじめに、硫黄の酸化状態の異なる多置換スルホニルアニリンの合成を検討した。その結果、酸化反応の進行によって吸収と蛍光の両波長が長波長かすることを見出した。続いて、側鎖のチューニングによる吸収・蛍光波長の長波長化を検討した。その結果、酸化反応が最後まで進行せずに目的物は得られなかったが、中間体の段階でフッ素原子の導入によって緑色蛍光から黄色蛍光に変化することがわかった。すなわち、フッ素原子による側鎖のチューニングが吸収波長と蛍光波長の両方の特性制御に効果的であることを見出した。特に、Togni試薬を用いると側鎖だけでなく芳香環が直接トリフルオロメチル化されることがわかった。本反応を用いることで、従来合成できなかった新規な蛍光母骨格を得ることができた。新規蛍光色素としてこれら化合物の今後の展開が期待される。最後に、スルホニルアニリン骨格の軌道節面を利用した発光波長の精密制御を検討した。その結果、今年度新たに合成したジュロリジル基を有するBMeSA誘導体を含めた計5種の化合物を比較したところ、電子供与性の大きい順に長波長化した吸収および蛍光スペクトルが得られた。量子化学計算により、光学特性変化がHOMOのみの顕著な上昇に起因するものであることが示され、1,4-位の軌道節面によって制御されることが明らかになった。本結果は「軌道節面制御による光学特性制御」というコンセプトを支持しており、有機光電子材料の分子設計における軌道エネルギー準位の制御に有効である。
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