研究実績の概要 |
液晶の中に、特定のサイズや形状、化学的性質を持つ空間を創出することすることで、外部刺激に応じて可逆的に応答するソフトなポーラスマテリアルとして新規な機能性材料を生み出すことが期待される。本研究では、カラムナー液晶中にディスクリートな空間を形成する超分子構造を基本ユニットとして、基板上に精密かつ高度に配向した液晶性ナノ空間を構築する。これまでの研究で得た0.5 ~ 2 nmのサイズの空孔を持つ大環状化合物が、熱量測定や偏光顕微鏡観察、斜入射X線回折実験から、カラムナー液晶性を示すことを明らかにした。これらの液晶性大環状化合物は、温度に対して可逆的に相変化し、組織構造を変えるサーモトロピックなカラムナー液晶であり、基板上で数百 μmにわたり大環状化合物が一次元組織化したナノチャンネル構造を形成することを明らかにした("Columnar Liquid-Crystalline Metallomacrocycles", S. Kawano, Y. Ishida, and K. Tanaka, J. Am. Chem. Soc. 137, 2295 (2015))。また、これらの液晶性大環状化合物はその環構造骨格に配位子となるサレン(またはサルフェン)配位子を持っており、様々な金属イオンを導入することができる。いくつかの多核型大環状金属錯体が、金属イオンの種類によって、液晶性や集積構造を制御できることを見出した。また、モデル化合物を用いた単結晶構造解析からも、大環状化合物の環状骨格が遷移金属イオンの種類やサイズによって、分子レベルで平面性を向上させたことが明らかとなり、それによりマクロな分子集合体である液晶の物性を制御することに成功した(S. Kawano, T. Hamazaki, A. Suzuki, K. Kurahashi and K. Tanaka, 論文投稿中)。
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