研究実績の概要 |
液晶の中に、特定のサイズや形状、化学的性質を持つ空間を創出することすることで、外部刺激に応じて可逆的に応答するソフトなポーラスマテリアルとして新規な機能性材料を生み出すことが期待される。本研究では、ディスクリートな空間を形成する液晶性大環状化合物を用いて、基板上に精密かつ高度に配向した液晶性ナノ空間を構築することを目的としている。以下に本基盤研究で得られた興味深い特性を示す。 1. 大環状骨格に、サレン配位子とジベンゾチオフェンからなる多核型大環状金属錯体が、金属イオンの種類によって、液晶性や集積構造を制御できることを見出した。また、モデル化合物の単結晶構造解析からも、大環状化合物の環状骨格が遷移金属イオンの種類やサイズによって、分子レベルで平面性を向上させることが明らかとなり、それによりマクロな分子集合体である液晶の物性を制御することに成功した(S. Kawano, T. Hamazaki, A. Suzuki, K. Kurahashi and K. Tanaka, Chem. Eur. J. 22, 12371-12380 (2016)。 2.ヒドロキサム酸を二つ有するナフタレン誘導体と銅二価のイオンから3:3の大環状金属錯体を効率良く得ることに成功した。この大環状金属錯体が、ラメラ構造を持つ液晶を形成することを明らかとした(S. Kawano, H. Inada, and K. Tanaka, Chem. Lett. 45, 1105-1107 (2016)。 3.カルバゾールーサルフェンからなる液晶性大環状化合物の温度可変の固体NMR測定を行うことで、相転移と共に大環状化合物の環状構造の運動性の変化が劇的に変化している様子をとらえることに成功した(S. Kawano and K. Tanaka, Bull. Chem. Soc. Jpn. in press.)。
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