研究実績の概要 |
平成28年度までにアダマンタン三脚-デアザプリン-フェロセン連結分子の自己組織化単分子膜のイオンセンサー機能が確認された。29年度は以下の研究を実施し、研究期間3年の総括を行った。 1)応答速度の改善---これまでに得たセンサー単分子膜はPb[2+]に対して高感度でフェロセン酸化還元電位のシフトを示したが、応答は遅く、数十分を必要とした。これは、単分子中にデアザプリンが密集しているためにPb[2+]の配位が空間的に困難になるためと考えられた。この問題の解決策として、(1)デアザプリンを結合しないアダマンタン三脚を共吸着させてデアザプリンの密度を下げること、(2)上部にヨードフェニル基を持つ三脚形トリチオールの単分子膜に対して膜上で薗頭カップリングによりデアザプリンを低密度で結合すること、を検討した。その結果、(1)では応答速度の改善が見られなかったが、(2)ではPb[2+]の濃度変化の直後に応答を示すことが確認できた。以上の結果、時間応答性を改良したイオンセンサーを得ることができた。 2)イオン選択性の検討---当初の目標である高いイオン選択性を確認するために、上記のPb[2+]の他にZn[2+], Hg[2+], Cu[2+]によるフェロセンの酸化還元電位の影響を調べた結果、Zn[2+], Hg[2+]の存在下では電位シフトを観測したがCu[2+]存在下ではシフトは観測されなかった。このことから、本研究のイオンセンサーは単一のイオンにのみ応答するものではないが、応答の有無が金属イオンの種類により明確に変化することが確認された。 以上、本研究課題の実施期間に分子三脚単分子膜による高感度、高速応答性、イオン選択性を有するイオンセンサーを得ることに成功した。
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