本研究は光誘起電子移動、プロトン移動、構造異性化を組み合わせることによって、多段階連鎖光反応系の開発を目指した。新たに設計したアンスラノール骨格とアクリジン骨格を直接結合した分子を研究期間内に合成し、光誘起電子移動の発現を確認した。ただし電子移動後のアクリジン骨格が高すぎる還元力をもつこと、それによって溶媒分子との副反応が優先することが判明した。また、当初設定した多段階反応の一部である大きな構造変化を伴う異性化については単独で実現することができた。特に、一方の異性体のみがもつ双性イオン構造に由来した分極によって、溶媒極性に応答して分子構造が大きく変化する新たな機能を見出すことができた。
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