研究課題/領域番号 |
15K05476
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小宮 成義 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00301276)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白金錯体 / d-π共役 / ソルバトクロミズム / 発光 |
研究実績の概要 |
2価白金を中心金属に有する平面4配位型錯体の配位面を、渡環鎖の導入により折り曲げることによる、ソルバトクロミズムおよび発光強度増大現象などの光学特性の新しい制御方法の開発に成功した。2つのサリチルアルデヒドヒドラゾンを配位子に有するトランス型の白金(II)錯体において、分子内水素結合や架橋構造に由来する構造的な束縛をかけることで、ヒドラゾン窒素のローンペアが中心金属に対して隣接基関与のような電子的影響を与え、光学特性が大きく変化することが明らかとなった。白金の配位面が折れ曲がった短いメチレン渡環鎖を有する錯体は、非常に束縛された構造に由来してヒドラゾン窒素と白金の間のd-π共役が強く、顕著なソルバトクロミズムを示す。それに対し、長いメチレン渡環鎖を有する白金錯体では、メチレン基の配座の自由度の高さから、白金の配位面の平面性が確保され、同時にヒドラゾン窒素のローンペアの配向自由度が高いために、ソルバトクロミズムが小さくなる傾向を示した。さらに、これらの渡環錯体において、酸添加による発光強度増大現象が観測され、渡環鎖の長い錯体では顕著な効果が見られるが、短い錯体ではそのような効果は小さくなることが明らかとなった。これらの結果は、平面4配位型白金錯体の配位面の平面性の変化、すなわち、d-π共役の程度により、光学特性に関連する挙動の感受性を変化させることができるという新しい知見を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サリチルアルデヒドヒドラゾン配位子を有する平面4配位型の白金錯体に渡環鎖を導入することで、白金周りの配位面の平面性を制御し、折れ曲がりの程度を変化させることで、d-π共役の変化が誘起されること、それにより、ソルバトクロミズムや酸誘起発光強度増大における感受性が変化するという、基礎的な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
分子構造に依存して、動的にd-π共役の変化を誘起させることのできる新しい構造を有する機能性白金錯体および有機発光性分子の開発を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究は順調に進行し、予算の大部分を使用した。次年度も試薬購入などの消耗品費が必要であるため、少し余らせた分は、次年度の物品費(消耗品)として使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題を着実に推進していくために、原料合成用の試薬の購入を行う予定である。
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