研究実績の概要 |
本年度は、白金配位平面に対し垂直なアリール置換基を導入した新規な燐光性白金錯体の創製と、特定の分子内白金-水素相互作用の関与した新しい固体発光制御に関する研究を行った。無置換、および、2位あるいは2,6位にアルキルおよびアミノ基を有するN-フェニル、あるいは、N-ナフチル基を有する一連のtrans-ビス(サリチルアルジミナト)白金錯体を合成し、結晶構造と固体発光特性の関係を精査したところ、N-アリール上のアルキル置換基と中心金属である白金との間の分子内相互作用の存在が明らかとなり、この相互作用が大きいほど室温の固体燐光に有利に働く重要な要因となることが明らかとなった。 研究期間全体を通じて、燐光性白金錯体を中心に、新規3次元分子構造を有する機能性分子の創出を行った。置換基導入による分子軌道エネルギー制御の他、分子内水素結合や架橋構造に由来する構造的な束縛による発光色、発光強度変化が可能なことを明らかにした。平面4配位型白金錯体の配位面の平面性の変化、すなわち、d-π共役の程度により、光学特性に関連する挙動の感受性を変化させることに成功した。さらに、分子ユニットのデザインと結晶工学に基づいて、本質的に難しい高輝度に発光する分子集合体の創出に成功した。分子構造および分子内・分子間相互作用と発光特性に関するこれらの知見は、本質的に不可能とされつつも将来にその実現が渇望されている高輝度で高効率に発光する結晶やゲル、液晶等の集合体創製とその方法論のための重要な指標となると考えられる。
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