研究実績の概要 |
初年度の実験実施計画では、フラーレンケージに複数の原子(団)を内包しているクラスタ-内包フラ-レンの光電子スペクトルを測定して、内包されたクラスターの内包構造や内包原子からフラ-レンケージへの電荷移動量などを見積もることを目的とした。H27年度の研究実績として、C3v対称性を有するC82に2個の金属種(Tm, Lu, Y, Er)を内包したTm2@C82-C3v, Lu2@C82-C3v, Y2@C82-C3v, Er2@C82-C3vのπ電子構造とケージの対称性との相関について調べた。その結果、同じケージ対称性を有する内包フラーレンの電子状態は内包された金属種には依存せず、互いに良く似たπ電子構造となることが分かった。密度汎関数(DFT)を用いた電子状態の理論計算結果と光電子スペクトルを比較しながら、内包された原子種の位置と電荷移動量について検証した結果、内包された金属の酸化状態は+3価であるが、フラ―レンケージへは4個しか電子移動しておらず、内包された金属原子間に2個の電子が局在していることが推定された。また、Li@C60とSc3C2@C82の光電子スペクトルを測定して、これらの電子構造について詳細に検討した。これらの研究結果については、関係する学会にて4件の研究発表および2件の学術論文(査読あり)として発表済みである。一方、超高圧+極低温条件下でのクラスター内包フラーレンの電気伝導性を評価するため、直流4端子法による電気抵抗測定が可能となるスクリュウ型ダイヤモンドアンビルセル(s-DAC)を新規購入してクラスター内包フラーレン薄膜試料の電気伝導度測定のための予備実験を開始した。
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