研究課題/領域番号 |
15K05481
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
兒玉 健 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20285092)
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研究分担者 |
古川 貢 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (90342633)
加藤 立久 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (80175702)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 複核金属内包フラーレン / スピン状態 / 多周波数ESR |
研究実績の概要 |
複核金属内包フラーレンM2@C80の1価のアニオンにおいては、余分の電子1個が外側の炭素ケージではなく、内包金属ダイマーの分子軌道に入ると予想されている。本研究の目的は、f電子を有するランタノイド金属Mを内包したM2@C80を合成・単離し、その1価のアニオンにおいて内包金属のf電子とダイマーの分子軌道に入った余分の電子との相互作用によって形成される特異なスピン状態を多周波数ESRを用いて明らかにすることである。 平成28年度に達成する予定であった、アニオン化することによって初めて安定に取り出せる複核金属内包フラーレンの単離方法を、その代表的存在であるY2@C80を対象として検討し、確立することに成功した。そこで予定よりも早かったが、前倒しでGd2@C80を対象とした研究を行った(Gdはf殻が半充填のf7電子系である)。Gd2@C80の1価のアニオンの単離に成功し、XバンドとQバンドで多周波数ESR測定を行った。その結果、Gd2@C80のスピン状態は、S=15/2で記述できるということが明らかとなり、二つのGdイオンがそれぞれ持つ二つのS=7/2と余分の電子のS=1/2が強磁性的に相互作用しているということを明らかにすることができた。また、Gd2@C80の単離を行った際、同時にGd2@C78の単離にも成功したため、Gd2@C78についてもXバンドとQバンドで多周波数ESR測定を行ったところ、Gd2@C80同様、そのスピン状態はS=15/2で記述できるということが分かった。その一方で、ケージが異なることにより、スピン系の置かれた環境が異なり、それがスピンハミルトニアンのパラメータに違いを与えていることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
困難があると考えていたアニオン化することによって初めて安定に取り出せる複核金属内包フラーレンの単離方法を確立することに成功した。これによって、対象とできる複核金属内包フラーレンの範囲が非常に大きく拡がった。
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今後の研究の推進方策 |
アニオン化することによって初めて安定に取り出せるM2@C80として、Yb2@C80を対象とする。Ybはf殻からf電子を1個引き抜いたf13電子系である。また、ホモ体のみでなく、ヘテロ体を対象とすることも検討していく。ヘテロ体については、同時に生成するホモ体から単離することが必要となり、その方法を開発することが必要である。
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