研究課題/領域番号 |
15K05482
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
北村 千寿 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60295748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テトラセン / 側鎖 / 固体色調 / 分子配列 / 分子間相互作用 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
テトラセン母骨格にアルキル側鎖を導入するとの固体状態の光物性が側鎖の長さや位置や形状により変化することを見出し、この機構の解明に向けて新しい分子配列を作り出すための新しい置換様式をもつテトラセン誘導体の合成を行った。当初予定の2-アルキルテトラセンの合成を進めたところかなり難しいことが判明したために、2,3-ジエステルテトラセンの合成に取り組んだ。ビス(ブロモメチル)フタル酸エステルとナフトキノンを原料に用いて、Diels-Alder反応によるナフトキノンの構築およびヒドリド還元/塩化スズ連続処理を経由する芳香族化により、2,3-ジエステルテトラセンの合成に成功した。最初にメチルエステル体の合成を行ったが、溶解性が低すぎることがわかりテトラセンキノンまでは合成できたがそれ以上の反応は進まなかった。プロピル以上の置換基の長さのエステルの合成を行い、結果としてプロピルエステルおよびブチルエステル体を作り出すことができた。溶液中ではほぼ同じ光物性であったが、固体の反射スペクトルの測定を行うとブチル体の方がややレッドシフトしており見た目の色調と対応することがわかった。プロピル体のX線結晶構造を行い分子構造と分子配列を調べた。エステルのアルキル層とアセン層が交互に繰り返した層構造を形成していること、および、アセン層ないではテトラセンの分子長軸が斜めに傾いて1層からなるヘリングボーン構造をとることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した目的分子の合成はうまく進まなかったが、2番目に考えていた分子の合成に成功し、学会発表で成果を報告している。
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今後の研究の推進方策 |
テトラセンの内側のベンゼン環に置換基を有する化合物の合成を進め、固体状態の光物性および分子配列について調べる。これまでに合成した分子のアルキル置換体の数を増やしたり追加、新しい置換様式の分子の合成の可能性について検討を行う。X線結晶構造解析が不可能な固体については粉末X線回折測定から分子配列に関する情報を取得するように努める。分子配列がわかったものに対してはDFT計算により分子間相互作用を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で重要な役割を占めるX線回折計の不具合が2016年3月に発覚し、高額な修理の見積となった。修理を行うと2016年度の予算が不足し研究の遂行に問題を生じる可能性が出てきたため、残金を繰り越して2016年度の予算で修理を計画した。
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次年度使用額の使用計画 |
X線回折計のメーカーからX線管球を発注し交換を行う。その他の不具合箇所についても修理で対応を行う。
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