研究実績の概要 |
テトラセン母骨格に側鎖を導入するとの固体状態の光物性が側鎖の長さや位置や形状により変化することを見出し、この機構の解明に向けて新しい分子配列を作り出すため、新しい置換様式として、テトラセンの内部ベンゼン環に置換基をもつテトラセン誘導体の合成を行った。当初の予定としてテトラセンの5,11位に置換基を導入する計画を立てていたが困難であることがわかり、代わりにテトラセンの5,12位に置換基をもつテトラセンの合成に成功した。5,12-テトラセンキノンとアセチリドとの反応を利用して、テトラセンの5,12位に炭素の個数が偶数のアルキニル基(C6H9, C8H13, C10H17)の導入を行った。いずれもトルエンやヘキサンなどの有機溶媒に可溶な物質であった。溶液中ではアルキニル基の長さにかかわらずほぼ同じ光物性を示した。蛍光量子収率は0.1付近であった。固体の反射スペクトルの測定を行うとC6H9のアルキニル基の方が、C8H13とC10H17体に比べやや濃い赤色をしていた。C8H13とC10H17体のX線結晶構造を行い、分子構造と分子配列を調べた。アルキニル基中のアルキル配座が異なること、および、テトラセン部位間の距離が7.6-8.4Åと離れ、分子間の相互作用がかなり弱いことが予測された。C6H9体の結晶は得られなかったが、固体中ではC6H9体のテトラセン間の分子間距離が近くなっており、分子間相互作用が働いて色が濃くなっていることが示唆された。
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