本研究ではジアリールエーテルもしくはアリールエーテルによりマクロ環構造を形成している生理活性天然物の新規合成戦略を提案し,その合成を行う。誘導体合成も視野に入れた一般性の高い合成法として,電子豊富な芳香族の直接的なエーテル化法を確立し,具体的な合成標的として細胞内チューブリンの重合阻害剤であり,合成難易度の高い第3級アルコールのアリールエーテルをマクロ環内に有する環状ペプチドであるウスチロキシン類の全合成を行う。 まず安価かつ安定な3価のトリアリールビスマスをそのままアリール化剤として用いることができるアリールエーテル形成手法の確立に成功した。この手法は常温かつ酸素雰囲気下で進行する極めて温和な反応であり,汎用性の高い手法であると言える。この手法を最大限に活用しウスチロキシンDの合成を進め,課題となるアリールエーテル部位の合成を行った。すなわち,ベータヒドロキシイソロイシンをエナンチオ選択的に合成しさらに縮合を進めて得たトリペプチドに対し,前述のアリールエーテル化を適用したところ,ペプチド鎖中の第3級アルコールをペプチド鎖のエピ化を起こすことなく高収率でアリールエーテルへと変換することが出来た。さらにジアステレオ選択的な官能基化とマクロ環の構築を経て全合成を完成させることができた。
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