研究課題/領域番号 |
15K05497
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
菅 博幸 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (60211299)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | カルボニルイリド / 不斉付加環化 / 複素環化合物 / キラルルイス酸 / オキシドピリリウムイリド / パラジウム触媒 |
研究実績の概要 |
二重活性化法によるイリドへのアルコールの不斉付加反応と加水分解による光学活性X-H挿入体合成法の開発: 3-(3-フェニル-2-ジアゾ-1-プロパノイル)-5,5-ジメチル-2-オキサゾリジノンから発生させたRhカルベノイドとp-ブロモベンジルアルコールとの付加生成物の構造をX線構造解析により明確にし,生成物はC原子にN原子と3つのO酸素原子の置換した4級炭素原子を有する2環式の珍しい構造を有する生成物であることを確認した。また,その相対立体配置はベンジル基とアルコキシ基がtransに配置していることも明らかにした。キラルなビナフチルジイミン配位子と亜鉛塩から調製した触媒の条件下,再度,種々のパラメーターを検討した結果,ベンジルアルコールの当量数を7.5当量にするとより高いエナンチオ選択性が得られることを見出した。最適条件において,7種類のジアゾ基質一般性を検討し,57-85% eeのエナンチオ選択性でベンジルアルコール付加生成物が得られることを明らかにした。また,アルコール付加体のPTSAによる加水分解生成物は,オキサゾリジンジオンでありそのX線結晶構造解析により,(S)の絶対配置を有することを見出した。このオキサゾリジンジオンは,5位に不斉炭素原子を有する光学活性2-オキサゾリジノン誘導体へエナンイオマー過剰率を大きく損なうことなく,変換できることを明らかにした。 Pd触媒によるオキシドピリリウムイリド種の生成と親双極子剤との付加環化反応の開発:6-アセトキシ-6-アセトキシメチル-2H-ピラン-3(6H)-オンを前駆体とするオキシドピリリウムイリドのPd触媒反応については,親双極子剤に関する基質一般性の検討を行い,イソプロピルビニルエーテル(71%),α-メチレン環状カルボニル化合物(61-71%),α-メチレンテトラリン(88%)が好結果を与えことを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二重活性化法によるイリドへのアルコールの不斉付加反応と加水分解による光学活性X-H挿入体合成法の開発:3-(3-置換-2-ジアゾ-1-プロパノイル)-5,5-ジメチル-2-オキサゾリジノン誘導体を基質として発生させたカルボニルイリドへのベンジルアルコールのエナンチオ選択的付加に関する検討は,ほぼ完了したが,3-アシル-2-チアゾリジンチオン誘導体をジアゾ基質として用いる形式的光学活性S-H挿入体合成および 3-アシル-2-イミノオキサゾリジン誘導体をジアゾ基質として用いる形式的光学活性N-H挿入体合成への応用へと展開できておらず,今後の課題となっている。また,アルコール付加の相対立体配置がtransとなる理由やアルコールの付加に関する機構が明確になっておらず,現在計算化学的手法を用いての解析を進めているところである。 Pd触媒によるオキシドピリリウムイリド種の生成と親双極子剤との付加環化反応の開発:6-アセトキシ-6-アセトキシメチル-2H-ピラン-3(6H)-オンを前駆体とするオキシドピリリウムイリドのスチレン誘導体,ビニルエーテル類,α-メチレン環状カルボニル化合物,アクリル酸誘導体などの親双極子剤との反応の基質一般性の検討は,ほぼ完了した。他の置換パターンを有する6-アセトキシ-2H-ピラン-3(6H)-オン誘導体に関する基質一般性の検討へは展開できておらず,今後の課題である。Pd触媒としてキラル配位子の添加によるキラルPd触媒を用いる検討はすでに行っているが,望むような不斉誘起が観測されておらず,副反応を伴った複雑な混合物を与える傾向を示す。
|
今後の研究の推進方策 |
二重活性化法によるイリドへのアルコールの不斉付加反応と加水分解による光学活性X-H挿入体合成法の開発:アルコール付加の相対立体配置がtransとなる理由やアルコールの付加に関する機構が明確になっておらず,計算化学的手法を用いての解析を進める。平成28年度の検討において,アルコール付加体のPTSAによる加水分解生成物は,オキサゾリジンジオンであることが明らかになった。形式的光学活性O-H挿入体合成を達成すべく,ジアゾ基質として,3-(3-置換-2-ジアゾ-1-プロパノイル)-5,5-ジメチル-2-イミダゾリジノン誘導体を用いる検討を行い,アルコール付加体のPTSAによる加水分解生成物が形式的なO-H挿入生成物を与える形式で加水分解するよう開裂位置を制御するための検討へと展開していきたい。 Pd触媒によるオキシドピリリウムイリド種の生成と親双極子剤との付加環化反応の開発:6-アセトキシ-6-アセトキシメチル-2H-ピラン-3(6H)-オンをオキシドピリリウムイリド前駆体とする反応に関しては,親双極子剤に関してほぼ基質一般性の検討を完了したので,6-アセトキシ-2H-ピラン-3(6H)-オン誘導体に関する基質一般性の検討へと展開していきたい。また,平成28年度までの検討において,オキシドピリリウムイリド前駆体として,6-t-ブトキシカルボニルオキシ-6-アセトキシメチル-2H-ピラン-3(6H)-オンを用いると,Pd触媒非存在下,20 mol%のトリエチルアミンのみで,スチレンとの[5+2]付加環化が80%を超える収率で進行することを見出しており,最適条件の確立と基質一般性の検討を行う予定である。
|