研究実績の概要 |
Pd触媒によるオキシドピリリウムイリド種の生成と親双極子剤との付加環化反応の開発:前年度までに6-アセトキシ-6-アセトキシメチル-2H-ピラン-3(6H)-オンを前駆体として,10 mol%のPd触媒存在下,1当量のジイソプロピルエチルアミンを作用させることにより,従来法と比べ,効率的にオキシドピリリウムイリドが発生できることを明らかにした.H29年度は親双極子剤に関する更なる基質一般性の検討を行い,種々のスチレン類(53-80%),ビニルエーテル類(60-76%),α-メチレン環状カルボニル化合物(61-71%),エキソ環状化合物(84-88%),および電子不足アルケン(62-65%)などの親双極子剤と中程度から良好な収率で付加環化することを見出した.また,6位の酢酸エステルを炭酸エステルとした基質を用いると,触媒量(20 mol%)のトリエチルアミンのみでより効率的にオキシドピリリウムイリドを発生させることができ,上記の親双極子剤とより高い収率で付加環化することを明らかにした.さらに,本手法は6位にアセトキシメチル基が置換していない基質や分子内付加環化における基質にも適応でき,良好な収率で付加環化体を与えることを見出した.α-メチレン-γ-ブチロラクトンとの付加体は,既存の方法(収率57%)を改良することにより,2段階収率76%で対応するpolygalolide合成における中間体へ変換できることを明らかにした. イリド形成と二重活性化法による不斉[2,3]-シグマトロピー転位反応の開発:アシルオキサゾリジノン部を有するアリルエーテル誘導体を合成し,ルイス酸存在下および非存在下で,Rh(II)触媒分解を行ったところ,目的とする分子内[2,3]-シグマトロピー転位反応は進行せず,対応するRhカルベノイドからのβ-脱離生成物が得られることを明らかにした.
|