研究課題/領域番号 |
15K05506
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山中 正浩 立教大学, 理学部, 教授 (60343167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不斉触媒 / Friedel-Craftsアルキル化反応 / ビスアミジン配位子 / インドール / DFT計算 / 立体選択性 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属触媒(ルイス酸)部位と有機分子触媒(水素結合)部位として働く作用点を有し、異なる不斉反応場を自在に制御可能な『動的反応場制御』を指向した分子性不斉触媒の開発を目的としている。本年度は、キラルビスアミジン骨格を設計基盤とするルイス-ブレンステッド複合酸触媒の開発を行った。キラルAg(I)-ビスアミジン触媒は、アミジン骨格の共鳴安定化構造により、ルイス-ブレンステッド複合酸触媒として作用して、インドールとニトロアルケン、α-置換-β-ニトロアクリレートの不斉Friedel-Craftsアルキル化反応において、高い不斉触媒能を示すこと見出した。それぞれの反応基質に対して、対アニオンを適切に選択することで、90% eeを超える高いエナンチオ選択性を達成している。触媒活性種探索の一環として、不斉配位子と生成物の鏡像異性体過剰率の相関関係について検討したところ、より強い配位性溶媒にてより直線的な線形性を示し、Ag(I)とビスアミジン配位子が1:1で錯形成した単量体が触媒活性種であると考えられる。さらにDFT計算によって、Ag(I)中心とブレンステッド酸性を示すNH部位が協働的に求電子剤を活性化し、末端N上置換基との立体反発によって立体選択性が制御されていることを見出した。また関連研究として、PyBidine-Cu(II)錯体による不斉[3+2]付加環化反応について理論的検討を行い、同様にCu(II)中心とイミダゾリジンNH部位との水素結合が協働的に作用していることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルイス-ブレンステッド複合酸としての触媒機能を見出し、類似の不斉反応の例とも併せてDFT計算を実施し、ルイス酸と水素結合の協働作用による立体制御機構を解明した。『動的反応場制御』を指向した分子性不斉の1つの設計指針を確立し、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
キラルビスアミジンとルイス酸の組み合わせによって発現する、ルイス-ブレンステッド複合酸としての触媒機能をさらに進展させる。具体的には、ルイス酸部位、ブレンステッド酸部位と二点相互作用可能な求電子剤に対して、様々な求核剤による不斉反応を検討する。併せて、ビスアミジン配位子を設計基盤とする複核金属触媒や酸・塩基複合触媒の開発も進める。また、関連の深い不斉反応についても引き続きDFT計算を実施し、複核金属部位や酸・塩基部位における協働作用による立体制御機構についてもさらに知見を深め、実際の触媒開発にフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費のほとんどは、本研究に関わる試薬、ガラス器具などの購入費に充てられているが、本年度は、研究進捗の都合上、反応遷移状態の計算研究にも多くの時間を費やすこととなったため、相対的に実験研究に要する試薬、ガラス器具などに充てる購入費用が抑えられる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度にDFT計算により解明した、反応遷移状態モデルに基づいて実験検討を中心に進めていくため、次年度使用額については、本研究に関わる試薬、ガラス器具などの購入費に充てる予定である。
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