研究課題
セグメントマルチブロック共重合体型熱可塑性エラストマーのソフトセグメントに動的共有結合であるジスルフィド結合を導入して刺激応答性自己修復熱可塑性エラストマーを合成することが本研究課題の目的である。平成27年度はチオール基を末端にもつソフトセグメント(ポリスルフィド)とハードセグメント(芳香族ポリスルホン)を合成しこれらを酸化することにより結合点にジスルフィド結合をもつマルチブロック共重合体の合成に成功した。これらマルチブロック共重合体がミクロ相分離構造を示すこと,熱可塑性エラストマーと同様な大きな伸びを示すこと,切断試料がUV光により修復性を示すことを明らかにした。平成28年度はソフトセグメント分子量が異なる2種類のマルチブロック共重合体を合成し,修復特性を詳細に検討した。試験片を破断した後密着させ,破断部位にUV光を照射することで破断伸びの回復率を評価したところ, UV光を5時間照射すると93%の回復率を示した。この共重合体ではソフトセグメントの接続部位にのみジスルフィド結合があるため,ソフトセグメント分子量が低い方が高い修復性を示した。平成29年度はジスルフィド結合から構成されるソフトセグメントを合成し,ジスルフィド結合濃度の高いマルチブロック共重合体の合成と修復特性について検討した。ジスルフィド濃度の増加により,照射に必要なエネルギーを170J/cm-2と大幅に低くすることに成功した。いずれの共重合体においてもUV照射によりジスルフィド結合の解裂によりチイルラジカルが生成するが,修復はジスルフィド結合の交換に加え,架橋反応により達成されることが溶解性変化より確認された。自己修復材料は材料の信頼性や寿命を向上することが期待でき,本研究はミクロ相分離型熱可塑性エラストマーに自己修復性を付与する新しい方法論として大きな波及効果が期待される。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry
巻: 56 ページ: in press
10.1002/pola.29016
巻: 55 ページ: 3545-3553
10.1002/pola.28736