本研究では、環状ペルフルオロアルキル基同士の相互作用と多環π共役系同士のπ-スタッキングの相乗効果を秩序構造形成の駆動力とする、全く新しい含フッ素n型導電性高分子材料の高効率合成を目指している。具体的には(1)オクタフルオロシクロペンテン(OFCP)のビスアリール化によるジアリールエテン誘導体の合成、(2)光照射下でのMallory反応による含フッ素多環芳香族モノマーの合成、(3)クロスカップリングを中心とする含フッ素n型導電性高分子の合成、(4)固体中における含フッ素n型導電性高分子の基本的な化学的・物理的性質の解明、(5)含フッ素n型導電性高分子の自己集積化(高秩序構造形成)と電子・光特性との関連性、について順次行う。 平成29年度は、これまでに実施した計画(1)~(4)の計画に基づいて、計画(5)を行った。具体的には、合成した高分子群の可視紫外吸収スペクトル、発光スペクトルを測定することにより、電子・光機能性と計画(3)で明らかにした構造の秩序性について議論した。高分子主鎖中に秩序構造形成を阻害するようなかさ高い置換基を導入しているのにもかかわらず秩序構造を形成するポリマーについては、それらの吸収および発光極大は対応する開環型のポリマーと比べて、いずれも長波長シフトしていることがわかった。このことから、高分子主鎖に含まれる環状の含フッ素ユニットは他の置換基・ユニットの形状にかかわらず、分子間でお互いに影響を及ぼすことが可能であり、ポリマーの秩序構造形成に大きな役割を果たしていることを見出した。
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