研究実績の概要 |
平成29年度は、種々の電子求引基を導入したフッ素四ケイ素雲母層間固定化bis(imino)pyridineFe(II)錯体触媒(PBI/Fe(II)-mica)を調製してその性能を評価し、さらにDFT計算によって置換基の電子的効果を解析した。まず、イミノフェニル基o-位に種々の電子求引基を導入したPBI/Fe(II)-micaにおいて、触媒性能に対する配位子の電子的効果を検討した結果、2-メチル-5-フルオロファニル基を持つ配位子を用いた時に最も高活性を示し、生成物中のオリゴマー選択率は75 %程度となった。一方、強力な電子求引基であるトリフルオロメチル基を2,5-位に有する配位子を用いた際にはオリゴマー選択率が14 %まで低下した。これは、電子求引性の増加に伴って、固体成分を生成する活性種の割合が増加したことによると予想した。続いて、DFT計算によってPBI鉄(II)錯体の鉄の電荷を算出し、得られた触媒活性や生成物選択性との関係を調査した。その結果、触媒活性およびオリゴマー選択性は鉄(II)のカチオン性と良好な相関があることが分かった。続いて鉄イオンの酸化数が触媒性能に与える影響を検討した。その結果、3価の触媒は2価の触媒の半分程度まで活性が低下した。また、重合挙動では誘導期が出現した。オリゴマー選択性やその分布は酸化数に依らず概ね一致し、活性点の性質は同じであった。これらの結果は、3価の触媒が反応中に2価に還元されていることを示唆していた。 最後にクロム(III)錯体をフッ素四ケイ素雲母層間に固定化した触媒を調製して評価したが、触媒活性は発現しなかった。触媒のキャラクタリゼーションの結果、雲母層間での錯体生成は進行しており、錯体と粘土鉱物との相互作用により不活性化している可能性が示唆された。
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