研究実績の概要 |
本研究の発展的展開にあたり、メカニズム解明は必須であり、発見研究者の役目と言える。前年度の結果(電気泳動に必要な構造因子の決定, Takasu et al. Biomacromolecules 2015, Polym. Chem. 2015)やバイオガラスなどのカチオン性無機物質の存在下でもアノード(+)に泳動すること(高須ら Macromolecules 2012)を考慮して、電気泳動メカニズムに迫った。溶媒効果、電極基盤(電極反応)の効果、分散液のゼータ電位測定を行うことによりアプローチし、プロトン性溶媒の誘電的な電荷分離が電気泳動の駆動力であると結論付けた(Takasu et al., Polymer 2016)。また、この機構は自動車や電化製品の電着塗装への応用の可能性が見い出された。電着塗装とは製品を塗料液中に入れてメッキのように電気を流し、付着させた樹脂を乾燥させ、熱硬化させるものを指す。しかし、下塗のカチオン型電着塗装は黒色のため、その後、まずカラーのベースとなる白~グレー系の中塗と、カラー・耐候用途の上塗工程が必要である。中塗・上塗工程においては、下塗塗膜が存在するために被塗物に通電されず、電着塗装は行えない。本研究を応用すると下塗と中塗を同時に行える省ステップ・省エネルギー型の電着等を提案できると新たな着想に至った(高須ら、塗装工学 2017)。また、次年度の電着による階層構造の創発を念頭に、電気泳動する非イオン性の微粒子をエマルジョン重合を駆使して調製した。300 nm程度の粒子サイズの整った微粒子が得られた。これを電気泳動させると階層構造に起因すると考えられる構造色が確認できた。走査型電子顕微鏡観察を行ったところステンレス基板上にハニカム構造が確認できた(Takasu et al., Polymer 2017および高須昭則、特願2016-171367)。次年度はこの予備的な実験結果を基に、チタン、白金など電極を変えて実験を行い階層構造形成および構造色の発色など表面機能の発現メカニズムに迫る。
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