研究実績の概要 |
P21空間群の置換キノジメタン(1a:R=R=R=Me,R=Et)の再結晶をクロロホルム/ヘキサン混合溶媒の比率を変えて行う事でキラル結晶を得ることができた。また、より効果的な右結晶と左結晶の作りわけは、この混合溶媒に少量のキラル溶媒を添加することで可能であった。右結晶と左結晶の区別は単離した結晶の単結晶線構造解析を行う事で決定することができた。 ハロゲン相互作用を期待して分子内にハロゲンの一つを有する非対称置換キノジメタン(2a-c:R=R=R=Me,R=CH2CH2X(X=F(a),Cl(b),Br(c)))を合成することを試み成功した。合成物の再結晶を種々の条件下で検討し、X線構造解析可能な結晶を得ることを試みたが、塩素を有する置換キノジメタン(2b)は、構造解析可能なサイズの結晶を得ることはできなかった。一方、フッ素(2a)と臭素(2c)を有する置換キノジメタンでは、単結晶構造解析可能な結晶を得た。フッ素原子を有する結晶はP-1で臭素原子を有する結晶はP21/cであり、両結晶ともP21の結晶ではなかった。ハロゲン原子により結晶構造が大きく変化しておりハロゲン原子間の相互作用が大きく影響していることが分かった。 2a-cについて光固相重合を検討した。2aはF-Fの相互作用が強く分子が動きにくく固相重合が進行しなかった。2bは結晶構造は未確定であるが、光固相重合が進行しなかったことから固相重合の進行に適した結晶構造を形成していないことが推測される。2cはBr-Br相互作用が強く、かつサイズが大きいことにより、二分子が対となる結晶構造を形成しているためシクロファン化合物が主に生成することが分かった。
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