研究実績の概要 |
P21空間群の置換キノジメタンを見出すため3種類の置換キノジメタン(1a:R1=R2= R3=R4=CH2C6H5,1b:R1=R2=R3=R4=CH2C6F5,1c: R1=R2=CH2C6H5,R3=R4=CH2C6F5)を新規に合成しその結晶構造解析をおこなった。いずれも化合物もキラルな空間群ではないP-1空間群であることが分かったが、それらの熱固相重合を検討したところ固相で重合が起きポリマーが束構造を有する状態が存在することを明らかにした。さらに、3個のCH2C6H5基と1個のCH2C6F5基を有する置換キノジメタンと1個のCH2C6H5基と3個のCH2C6F5基を有する置換キノジメタンの合成にも成功した。結晶構造と重合性については今後検討する。 P21空間群である置換キノジメタン(2a:R1=R2=R3=Me,R4=Et)の再結晶をキラル溶媒を添加することで右結晶と左結晶に作り分けることに成功したので、これらの光固相重合を検討し、得られたポリマーのCD測定をHFIP溶媒中で検討したが、明確なCDスペクトルを観察できなかった。一方、非対称置換キノジメタン(2b-d:R1=R2=R3=Me,R4=EtF(b),EtCl(c),EtBr(d))の光固相重合を検討したところ重合は起きなかったが2dから選択的に[2.2]パラシクロファンが生成することを見出した。この生成は結晶構造から明確に説明できた。さらに[2.2]パラシクロファンは酸素分子と反応しシクロファン過酸化物を定量的に生成する初めての例を見出した。 3軸非対称置換キノンメチド(R1=CN,R2=COOCH2C6F5)を新規に合成し、その結晶構造解析を検討したところ空間群はP21/nであることが分かった。熱固相重合が起き2回(21)らせん重合が起きたが、結晶に反転中心であるため光学活性ポリマーではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画した1)の非対称置換キノンメチドとして新たにCH2C6F5基を有する化合物を単離可能な結晶として合成に成功したが、その結晶構造解析を行った結果、P21空間群の結晶ではなかった。P21空間群の結晶を見出すにはまだ至っていないが、21らせん重合する新たなモノマーであることを見出した点は注目に値する。 2)のP21空間群の置換キノジメタン化合物についてはキラル溶媒を添加することで両鏡像体を得ることに成功した。また、結晶構造解析から右結晶と左結晶であることを決定すした。これらの結晶の光重合でえられたポリマーのCD測定をおこなったが、CD測定からはキラル重合体結晶であるかどうかは決定できなかった。 一方、3種類の対称置換キノジメタンを新たに合成し、それらの結晶構造解析を行った。いずれもP-1空間群であることが分かった。新たにCH2C6H5基あるいはCH2C6F5基を有する非対称置換キノジメタンの合成に成功した。結晶構造については今後の検討である。 ハロゲン(CH2CH2F,CH2CH2Cl,CH2CH2Br)基を有する非対称置換キノジメタンの合成に成功し、それらの光重合を検討した。その結果、CH2CH2Br基を有する化合物は選択的に[2.2]パラシクロファンが生成することが分かった。これらの事実からおおむね順調に進行していると判断した。
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