研究課題/領域番号 |
15K05521
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井原 栄治 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90243592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポリ(置換メチレン) / リビング重合 / 立体特異性重合 / ジアゾ酢酸エステル / パラジウム錯体 |
研究実績の概要 |
リビング重合の確立については、前年度にホスファゼンやデンドロンといった立体的に嵩高い置換基をエステル部に有するジアゾ酢酸エステルの重合がリビング的に進行することを明らかにしたが、今回、特にデンドロン含有モノマーに関して、世代の異なるデンドロンを有するモノマーを合成し、その重合挙動を詳細に検討した。その結果、やはりデンドロンの世代の上昇と共に、得られるポリマーの分子量分布が狭くなることが明らかとなった。さらには得られたポリマーのMALDI-TOF-MS分析により、この重合の開始・停止機構を明らかにした。 立体特異性重合については、前年度に確立したオリゴマーの重合度分別とそのジアステレオマー分割という手法を用いて、ジアゾ酢酸メチル4量体の各ジアステレオマーを数十ミリグラム得ることに成功した。現在、それらの結晶構造解析による構造の同定を検討中である。さらには、この手法を用いて、エステル部の置換基がメチル基以外のモノマーからのオリゴマーの合成を行い、そのNMRの解析から、エステル部の置換基の違いがジアステレオマーの生成比に与える影響を調査している。 また、新たに開発に成功したアミジナート/Pd系という重合開始剤系を用いて得られるポリマーの主鎖の立体構造が、従来の開始剤系により得られるアタクチックなものに比べて、かなり制御されていることが判明した。さらには、ナフトキノン/Pd系という新しい重合開始剤系では、N-ヘテロ環状カルベン(NHC)を添加することによって、重合挙動を制御できることを見出しており、ここで用いるNHCの構造の適切な選択による、リビング重合や立体特異性重合の実現を目指した検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としているジアソ酢酸エステルのリビング重合、立体特異性重合の確立のための、重要な研究成果を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の研究を継続し、当初の計画通りに、ジアゾ酢酸エステルのリビング重合と立体特異性重合の確立を目指す。 リビング重合については、各種のエステル置換基を有するジアゾ酢酸エステルの重合挙動を、様々なPd錯体開始剤系を用いて検討する。 立体特異性重合については、NMRによるtacticityの解析手法の確立を目指すと共に、各種のPd錯体による重合を行って、錯体の立体構造と得られるポリマーのtacticityとの関係を明らかにする。その結果に基づいて、高度な立体制御を可能とする開始剤系の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定として計上していた設備備品(赤外分光光度計)の購入経費を、別の予算から支出できた。その備品購入予定の経費は、初年度および当該年度の研究計画の遂行のために必要となる実験用消耗品の購入に充てたが、結果として次年度使用額として計上された金額分が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、研究計画の遂行に必要となる実験用消耗品の購入に充て、次年度に全額使用する予定である。
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