研究課題/領域番号 |
15K05523
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
横山 明弘 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50343637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鈴木-宮浦カップリング反応 / ポリフェニレン |
研究実績の概要 |
平成27年度は側鎖として4位にイソブトキシメチル基を有する2,6-ジブロモベンズアミドをメタフェニレンモノマーとして用い、1,4-ベンゼンジボロン酸との鈴木-宮浦カップリング重合を行った。しかし生成物の溶解性が低いために構造決定が困難であった。そこで平成28年度は溶解性の向上とポリマー中におけるメタフェニレンユニット間の効率的な水素結合形成を期待して、グリシンメチルエステルをアミド結合で導入したメタフェニレンモノマーを合成した。 まず、メタフェニレンモノマーと2当量のp-トリルボロン酸とのモデル反応を用いて鈴木-宮浦カップリング反応の最適条件を求めた。その結果、パラジウム触媒としてビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、塩基としてフッ化カリウムを用いると、ほぼ定量的に鈴木-宮浦カップリング反応が進行する事を見出した。 そこで得られた最適条件を用いてメタフェニレンモノマーと1,4-ベンゼンジボロン酸とのカップリング重合を行った。しかしモノマーが消費せず、分子量が数百程度のオリゴマーしか得られなかった。 一方、メタフェニレンユニット間の分子内水素結合を単結晶X線構造解析で確認するために、2量体のモデル化合物の合成を検討した。1,4-ベンゼンジボロン酸と2当量の2-ブロモ安息香酸メチルとで鈴木-宮浦カップリング反応を行ない、得られたm-ターフェニル体のメチルエステルを加水分解してジカルボン酸とした。塩化チオニルを作用させて酸塩化物とした後にグリシンメチルエステルと反応させて、目的とする2量体のモデル化合物を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたモノマーを重合したところ、生成物の溶解性が低くて構造が解析できなかった。そのため溶解性の高い構造に変更してモノマーを合成しなおしたため、予定よりやや遅れた。新しいモノマーはスムーズに合成することができた。 モデル反応を用いた鈴木-宮浦カップリング反応の条件検討では、当初の予定通り、反応をほぼ定量的に進行させる反応条件を見出すことができた。しかしその反応条件を用いた重合では反応が効率よく進行しなかったため、予定よりも進行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
現在の最大の問題は、モデル反応を用いて最適化した鈴木-宮浦カップリングの反応条件では重合反応が進行しないことである。研究室内で行っている、同様な化合物を用いた他の研究から、メタフェニレンモノマーの2位に導入したアミド結合が鈴木-宮浦カップリング反応を阻害していることを示唆する結果が得られた。そこで今後はオルト位にアミド結合を有するブロモベンゼン誘導体2当量と1,4-ベンゼンジボロン酸あるいはそのジピナコールエステル体を用いたモデル反応を検討し、反応条件を再度最適化する。 このようにして求めた最適反応条件を用いてメタフェニレンモノマーと1,4-ベンゼンジボロン酸あるいはそのジピナコールエステル体との反応により、大環状化合物の合成を検討する。さらに、得られた大環状化合物を単結晶化して、X線構造解析により立体構造を明らかにする。また大環状化合物の内部空洞へのアミノ酸や糖の取り込みを検討する。大環状化合物とこれらの化合物間の相互作用が弱い場合は1H NMRを使って取り込みを検出するとともに、疎水性の高い側鎖を有する大環状化合物を合成して非プロトン性非極性溶媒中でのゲスト分子の取り込みを検討する。相互作用が強い場合の検出にはUV-VISやCDを使うとともに、プロトン性溶媒中や極性溶媒中での取り込みを検討する。 1,4-ベンゼンジボロン酸のベンゼン環をビフェニルやp-ターフェニルにしたジボロン酸を用いて、内径の大きな大環状化合物の合成も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」として残った金額が、試薬などを購入するには少なくて、効率的に使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の予算とあせて試薬などを購入するために使う。
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