研究実績の概要 |
平成28年度は、グリシンメチルエステルをアミド結合で導入したメタフェニレンモノマーを合成し、モデル反応により、パラジウム触媒としてビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、塩基としてフッ化カリウムを用いると、ほぼ定量的に鈴木-宮浦カップリング反応が進行する事を見出した。そこで平成29年度は、その条件を用いて重合を検討したが、重合は進行しなかった。種々のパラジウム触媒を用いて検討した結果、塩基の水溶液を用いる鈴木-宮浦カップリング反応では重合が進行するものの、メタフェニレンモノマーの側鎖のメチルエステルが加水分解することが明らかになった。 そこで側鎖であるグリシンのカルボニル末端をN,N-ジメチルアミドとしたメタフェニレンモノマーを新たに合成し、その重合を検討した。その結果、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]パラジウム(II)とリン酸三カリウムを用いて水とTHFの混合溶媒中室温で反応させたところ、重合が進行することを見出した。 次に目的とする大環状化合物が優先して得られる反応条件を探した。水/THFが42/58の混合溶媒中、モノマーの初期濃度を0.030Mにして反応を行うと、オリゴマーと共にポリマーが生成した。水とTHFの比率をほぼ同じにし、モノマーの初期濃度を0.018Mに下げると、0.030Mの時と同様にポリマーが生成した。そこで水の比率を減らし、水/THF=13/87の混合溶媒中でモノマーの初期濃度を0.014Mにして反応を行うと、主生成物はオリゴマーになった。この粗生成物を分取用HPLCにより分取した結果、質量分析により8量体の環状物が生成していることを明らかにした。水の比率を減らすと大環状化合物が得られたことより、この大環状化合物の生成には分子内の水素結合が関与していると示唆された。
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