研究実績の概要 |
最終年度において、5員環カーボナート構造を持つ炭化水素系ポリマーとして5員環カーボナート基を有するポリシクロペンテンの合成と物性検討を行った。ヒドロキシメチルシクロペンテンにエピクロロヒドリンと水素化ナトリウムを作用させることでエポキシ基を持つシクロペンテンを合成し、エポキシ基に二酸化炭素を付加させることで5員環カーボナート基を持つシクロペンテンモノマー(5CCP)を合成した。得られた5CCPにルテニウムカルベン錯体(グラブス触媒I)を作用させることで数平均分子量100,500、重量平均分子量139,300のポリ(5CCP)を得ることに成功した。また、示差走査熱量分析ならびに熱重量分析の結果、生成ポリマーのガラス転移温度は2℃で室温では十分に柔軟かつ、200℃以上の耐熱性を有することが明らかとなった。しかしながら、重合反応における収率は30%と低く、目的とするポリマーを効率的に得ることができず、リチウムイオンを添加した際のイオン伝導性を検討することが出来なかった。これは、重合反応のおいて使用した触媒が5員環カーボナート基に対して不安定で重合途中で重合末端が失活するためであると考えられる。今後はカーボナート等の官能基に対してより耐久性が高いと期待されるカルベン錯体(グラブス触媒1I)を使用して重合反応を継続的に検討する必要があると考えている。 なお4年間に渡る本研究全般を通して、5員環カーボナート構造を持つポリカルボシランや、ポリシロキサン、ポリビニルエーテル等の柔軟なポリマーにおいて、過剰量のリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドを添加することで非常に高いイオン伝導性を発現することを見出すことができ、5員環カーボナート構造を持つポリマーの固体高分子電解質としての有用性を明らかにできたことは大きな成果であると考えている。
|