今後の研究の推進方策 |
ヒストンのアセチル化に関する実験を実サンプルを用いておこなう。ヒストンのアセチル化を担うHATの阻害剤や、ヒストンディアセチラーゼ(HDAC)阻害剤をヒト株化細胞に作用させ、アセチル化の異なるヒストンを細胞から抽出・回収する。HAT阻害剤としては、Anacardic acidやCurcuminを検討しており、HDAC阻害剤としては、ApicidinやTrichostatin Aを用いる予定である。上記の方法によって、ヒストンの電荷/重量比を求め、実サンプルにおけるヒストンのアセチル化度を評価する。 当初予定のヒストンメチル化の実験に取り組む。ヒストンのメチル化は電荷の変化をともなわない(-NH3-n+-Men、n=1-3)。そこで、メチル化のおこなわれていないリジン残基については化学的に電荷をラベルする手法を採用する。これは、以前、タンパク質の高感度電荷検出法として開発された手法であり(Goda, Anal. Chem. 2010, 82, 8946)、未修飾のリジン残基について選択的に負電荷へと電荷を変換する電荷ラベリング法である。アセチル化の実験と同様に、既存の方法との比較をおこない、メチル化度の定量的な検出をおこなう。 アルツハイマー病のバイオマーカーであるリン酸化タウタンパク質の評価に関するモデル実験をおこなう。トレオニン181、セリン199、セリン202、トレオニン205等のリン酸化によってタンパク質に付与された負電荷を直接検出することを試みる。チューブリンやアプタマー(Krylov, FEBS Lett, 2005, 579, 1371; Kumar, BioNanoSci, 2012, 2, 83)などタウタンパク質と特異的に結合するリガンドを電極に修飾し、高感度測定をおこなう。
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