研究課題/領域番号 |
15K05532
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
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研究分担者 |
宮崎 義信 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50253365)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 河川水 / マンガン / 酸化状態別分析 / 固相分光法 |
研究実績の概要 |
本年度は溶存態 Mnの化学状態別定量法開発を中心に行った。定量法には水試料中の溶存微量金属元素の酸化状態別定量に適している固相分光流れ分析法(FI-SPS)を、また発色試薬としてはMn(II)に対してすぐれた選択性を示すホルムアルドキシム(Formaldoxime、 以下FAOと記す)をそれぞれ用いることとした。 Mn(II)とFAOの間の錯生成反応は、pHが 8.0以上でFAO濃度が4~60 mmol dm-3 であれば定量的に進行することが確認された。しかしpH 10.5以上では、天然水中にMn(II)と共存するFeとFAOとの錯生成により、Mn(II)の定量値に正誤差を与えることが予想されたため、FAOがMn(II)に対してより選択的に錯生成し得るpH 9.5を錯生成における示適pHとした。 Mn(II)とFAOは1:6錯体を生成するが、溶存酸素非共存下では発色しないことが報告されている。したがって、錯体中のMnの酸化数は3もしくは4であると推定され、錯体は [Mn(FAO)6]2-もしくは[Mn(FAO)6]3-として溶存していると推定された。生成錯体を含む溶液に対して実際に陽イオン交換体、陰イオン交換体、架橋デキストランを添加したところ、陰イオン交換体であるQAE-SephadexとAG1-X2に対して錯体の分配が見られた。バッチ法による固相分光法でその分配比を測定したところ、AG1-X2で200、QAE- Sephadexで900と高い値を示した。上述の至適条件におけるMn(II)-FAO錯体のモル吸光係数は9800(mol-1 dm3 cm-1)であるので、本錯生成系をFI-SPSに適用すれば、数cm3の試料溶液を用だけで、sub-μg dm-3レベルの溶存態Mn(II)が定量可能となることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で当初用いる予定であったMn(II)の分析法は、河川水中の溶存態Mn(II)の酸化状態別分析に対して十分適用できるだけの感度を有していたが、Mn(II)に対してFe(II)およびFe(III)が2倍量共存した場合に18%もの正誤差を与えることが確認されたため、Mn(II)に対して高い感度を有するだけでなく、より選択性に優れた分析法を新たに検討する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度上半期を目途に、Mn(II)-FAO錯生成系を適用したFI-SPSによるMn(II)の高感度な酸化状態別分析法を確立する。さらに定量操作の簡便化、試料の保存法に関する検討、on-site 分析化に関する検討も行う。 その後の期間で、開発した分析法の有効性に関する十分な実証試験と、溶存全MnをMn(II)として定量を行うための還元条件の検討を並行して行う。さらに同法を用いた指針値超過河川と対照河川における溶存Mnの分析、ICP-MSを用いた安定有機錯体・共存微量元素の見積もり、さらにこれらのデータを基にして、河川水中のMnの動態について平衡論の観点から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Mnの酸化状態別分析法開発に遅れが生じたため、研究分担者が行う予定にしていた天然水中におけるMnの還元条件に関する検討、Mnの溶存状態に関するモデル実験等に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者が行う予定であるMnの還元条件に関する検討、Mnの溶存状態に関するモデル実験等で必要となる消耗品を購入予定である。
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