本研究では、ポリイミドを出発物質として、新規な選択性を有する試料抽出媒体ならびにクロマトグラフィー用の分離固定相を開発した。抽出媒体・固定相のコアとなる粒子表面を、ポリイミドを重合させながら被覆することにより、均一な粒子径を有する球状微粒子を合成し、その後の加熱処理による縮合反応を利用して表面に芳香環を有する微粒子を作製し、その新規分離媒体・抽出媒体としての性能評価を行った。本研究課題における主な検討項目は以下の通りである。 1 [ポリイミド微粒子の抽出性能評価] 合成した各種ポリイミド微粒子を内部に充填した小型の抽出デバイスを作製し、モデル水試料からの抽出性能を評価した。試料溶質として種々の極性・化学構造を有する芳香族化合物群を用いることにより、その抽出選択性と試料溶質の分子構造および物性との関連についても検討した。 2 [ポリイミド被覆微粒子の開発と抽出性能評価] 抽出媒体として期待できる化学構造を有する架橋ポリイミドを、コアとなる微粒子表面に被覆することにより、ポリイミド被覆粒子を作製した。また、抽出媒体としての性能を維持したまま、効率よく薄膜状に被覆し得る作製条件を確認するとともに、その抽出選択性と微粒子構造(膜厚、粒子径、コア粒子の材料等)について系統的に検討し、条件の最適化を行った。 3 [クロマトグラフィー固定相としての可能性評価] ポリイミド被覆微粒子を液体クロマトグラフィーならびにガスクロマトグラフィーの分離固定相としても使用し、その分離選択性とポリイミド化学構造との関係について検討するとともに、従来の固定相との差異について確認した。合成したポリイミド被覆微粒子の化学構造・粒子径・粒子形状等と、有機溶媒中での使用ならびに高温条件下での長時間使用における耐久性についても検討した。またその溶質に対する分離選択性についても従来の固定相と比較した。
|