研究課題/領域番号 |
15K05538
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 宗孝 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90221861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 修飾電極 / ボルタンメトリー / 電気化学分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、おもにニッケル基板に貴金属ナノ粒子を修飾する方法について検討した。昨年の研究の結果、貴金属イオンの水溶液に金属ニッケルを一定時間浸漬するだけの簡便な方法により酸化還元電位差を利用して貴金属のナノ構造やマイクロ構造をニッケル表面に修飾できることがわかったので、その詳細に関して以下の点を検討した。 まず、金の表面修飾に関しては、浸漬時間と塩化金酸濃度がニッケル線の表面修飾に与える影響について詳細に検討した。その結果、金の結晶をニッケル表面に修飾するためには、0.1 mM程度以上の濃度の溶液が必要であるが、例えば、1.0 mMの塩化金酸溶液では、1時間程度で表面全体が高密度で修飾され、24時間も浸漬してしまうと表面が錆状になるように過剰量の金が修飾されることがわかった。このことは、浸漬時間の制御によって表面に修飾できる金の量や状態を制御できることを示している。また、0.01 mM程度の希薄溶液では、浸漬時間を長くしても金の表面修飾がほとんどないことがSEM像の測定から観測できたが、グルコースの電極触媒応答を測定すると一定の触媒応答が観測できた。このことは、ごく少量の金がニッケル表面に存在するだけで触媒応答が発現することを示唆している。そのため、その詳細については金の省量化の観点から、さらに検討を進める予定である。 また、パラジウムと白金のニッケル表面修飾についても検討した。その結果、パラジウムの表面修飾は金と同様の濃度や浸漬時間で進行させ得ることがわかった。それに加えて、2価と4価の塩化パラジウムイオンでの表面修飾の違いを明らかにした。しかし、白金に関しては、パラジウムに比べて高濃度の金属イオン溶液が修飾に必要であり、また、その再現性もあまりよくないことがわかった。白金に関しては、還元剤を加えて修飾を促進するような方法も用いて、さらに検討を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の検討に基づいて、酸化還元電位差を利用した金属表面の新しい修飾法に関して、特にニッケル表面への貴金属の修飾に集中して検討を進めることができた。その結果、貴金属イオン水溶液の濃度や浸漬時間が表面修飾に及ぼす影響や、化学種による表面修飾の違いに関して系統的な知見を得ることができた。そのため、研究は順調に進展しているものと考える。 ニッケル基板に関して集中的に検討を進めた結果、本年度当初に挙げていたチタンやパラジウムの表面修飾については行えなかったが、来年度以降さらに検討を進める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究に関しては、特に以下の事項について検討を進める計画である。 1.金をニッケル表面に微量修飾した際に電極触媒応答が発現する機構については、表面分析などの手法も併せてさらに検討を進めて、その詳細を明らかにする。 2.基板金属をニッケルだけでなくチタンやパラジウムなどのついても検討して、貴金属の電極触媒反応の向上や、新規電極反応の発現の可能性を検討する。 3.これまでの検討では、おもに平板電極や金属線を利用してきたが、マイクロ金属粒子の表面への修飾についても検討して、新しい異種金属間のマイクロ複合材料の可能性を明らかにする。 4.国際共同研究によって異種金属間のマイクロ複合材料の応用の可能性についても明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
簡便な金属線の利用と、貴金属イオンの少量化について検討したため、物品費については大きく抑えることができた。その一方、国際共同研究によって応用の可能性を探索するために、旅費の支出が多くなった。トータルで、次年度への繰越額は、昨年の3分の1程度に減額している。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は成果報告などのために旅費の費用が引き続き多くなることを予測しているが、物品費も含めて有効に活用して成果があがるように使用していく計画である。
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