本年度は、まず、昨年度にも検討したニッケル表面への金の修飾に関してさらに検討した。その結果、0.01 mMや0.001 mMの塩化金酸水溶液中にニッケル線を1時間浸漬した場合には、SEM像による観察の結果では金の析出がみられないものの、グルコースや尿酸の電解酸化反応に関しては金に由来するような一定の触媒効果があることがわかった。また、フェロシアン化物イオンの酸化反応に対しても、電極応答を金のものに改質する効果があることがわかった。これらの成果については、すでに論文にまとめた報告したが、SEM像で認識できない修飾状況については、基板であるニッケルの電気化学応答などを詳細に測定するなど、さらに検討を進めている。 また、ニッケル線にパラジウムを修飾する試みについてもさらに検討を進め、反応温度などの条件の最適化によって、再現性良くパラジウムを修飾できる条件を明らかにした。また、塩基性溶液中でのエタノールの電極触媒反応についても検討して、ニッケルがパラジウムを担持する材料としても有効であることも明らかにした。パラジウム担持ニッケルの電極触媒応用に関しても、さらに検討を進めている。 別の電極材料としては、チタン線を用いた金の修飾についても検討した。酸化還元電位差からは、チタンはニッケルより負の電位で酸化されるため、金の自発的な析出が期待できたが、実際には表面での不動態の形成のため反応は進行しなかった。しかし、反応溶液中にクエン酸イオンを共存させることにより、微小な金ナノ粒子をチタン表面に修飾できることを、微小電極に特有なシグモイダルの電気化学応答を観測して明らかにできた。 このほかにも、パラジウムへの金の析出などについても検討を開始して、塩基性溶液中でのエタノールの電極触媒反応に関して単に双方の金属の応答を足し合わせただけではない興味深い電気化学応答を得ることができた。
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