研究課題/領域番号 |
15K05539
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
久保埜 公二 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00269531)
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研究分担者 |
横井 邦彦 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30144554)
谷 敬太 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60207165)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境分析 / 超分子化学 / 分子認識 / 蛍光プローブ / アニオン定量 |
研究実績の概要 |
本研究は、配位結合,水素結合,超分子光相互作用を利用した金属錯体型アニオン蛍光プローブの開発を行い,リン酸イオンや四フッ化ホウ酸イオンなどをターゲットとし,それぞれのアニオンに適した超分子相互作用の特徴を活用することで高感度な新規定量分析法の構築を行うものである。平成28年度は,27年度において良好な結果が得られたキノリン系亜鉛(II)錯体を蛍光プローブとして用いて,各種アニオンとの超分子錯体の生成確認を試みた。この亜鉛(II)錯体溶液に各種アニオンを添加したところ,リン酸水素イオンの場合には蛍光強度の減少が確認されたが減少率はわずかであった。その一方で,二リン酸イオンに対しては顕著な強度減少が確認され,吸収スペクトルからも亜鉛(II)錯体と添加アニオンによる超分子錯体の生成が認められた。滴定による蛍光スペクトルデータを詳細に解析したところ,この超分子錯体の組成は亜鉛(II)錯体と二リン酸イオンが1:1であることが明らかになった。さらに,新たな蛍光プローブとしてクマリンにピペラジンを導入した化合物を設計・合成し,NMR,質量分析法,元素分析,単結晶X線構造解析により同定した。得られた化合物を配位子とする各種金属塩との錯体について,溶液の吸収スペクトル並びに蛍光スペクトルによる蛍光プローブとしての評価を行った。その結果,臭化亜鉛(II)錯体溶液において特に強い蛍光性を示すことや,この錯体にリン酸二水素イオンを添加すると蛍光強度が減少することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにキノリン誘導体の亜鉛(II)錯体をプローブとし,各種アニオンとの超分子錯体の生成確認を試みたところ,リン酸水素イオンの場合には蛍光強度のわずかな減少であったが,二リン酸イオンに対しては顕著な強度減少が確認された。吸収スペクトルから亜鉛(II)錯体と添加アニオンによる超分子錯体の生成が認められた。さらに,新たな蛍光性配位子としてクマリン誘導体の設計と合成を行い,この臭化亜鉛(II)錯体溶液がリン酸二水素イオンの添加により著しい蛍光強度の減少が起こることを確認した。よって,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従い, 28年度において良好な結果が得られた蛍光プローブを用いて,リン酸イオンなどの超微量定量法の構築とそのセンシング機構の解明を行う。溶媒などの測定条件の最適化,並びに妨害イオンの影響などについて詳細に調べ,高感度定量法の確立を目指す。なお,キノリン誘導体の亜鉛(II)錯体については二リン酸イオンを,クマリン誘導体の亜鉛(II)錯体についてはリン酸二水素イオンをターゲットアニオンとして研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入を次年度にしたことと,合成用試薬やスペクトル測定用溶媒などの消耗品費の使用が少なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
予定に加えて,蛍光光度計やスペクトル測定用溶媒などの物品費に使用する予定である。
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