研究実績の概要 |
本研究は、配位結合,水素結合,超分子光相互作用を利用した金属錯体型アニオン蛍光プローブの開発を行い,リン酸イオンや四フッ化ホウ酸イオンなどをターゲットとし,それぞれのアニオンに適した超分子相互作用の特徴を活用することで高感度な新規定量分析法の構築を行うものである。平成29年度は,28年度までに良好な結果が得られたキノリン系亜鉛(II)錯体を蛍光プローブとして用い,アニオンの微量定量法の構築を行った。水/メタノール混合溶媒中(50/50, v/v, pH5.5)でキノリン系配位子と亜鉛(II)イオンとを1:1の割合で錯形成させ,これに等量の各種アニオンを添加したところ,二リン酸イオンに対して選択的に蛍光強度が減少した。そこで,30μMの亜鉛(II)錯体溶液について二リン酸イオンの滴定を行ったところ,0~4μMの範囲で蛍光強度との間に良好な直線関係が得られた。なお,検出限界は,137 nMであった。一方,ターゲットであるリン酸水素イオンを添加した場合には蛍光強度の減少が確認されたが減少率はわずかであり,その他のイオンについては蛍光強度の減少は確認されなかった。さらにpH7.0の亜鉛(II)錯体水溶液で同様の実験を行ったところ,蛍光強度の減少率は水/メタノール溶液には及ばないものの,こちらも二リン酸イオンに対して選択的な消光が確認された。この条件での検量線の直線応答範囲は0~3μMであり,検出限界は199 nMであった。さらに,このキノリン系配位子と臭化亜鉛(II)との錯体について,結晶状態による単離を試みたところ単結晶が得られた。X線構造解析の結果,配位子の他に臭化物イオンも配位した亜鉛(II)錯体であることが明らかになった。
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