研究課題/領域番号 |
15K05542
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宗 伸明 佐賀大学, 農学部, 教授 (90336008)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 無機ナノシート / 酵素 / 蛍光 / バイオ材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、無機ナノシートと酵素から成るハイブリッド材料を構築し、これを用いた生体分子検出法の開発を試みる。本年度は、まず無機ナノシートの合成と酵素とのハイブリッド体の構築を試みた。水酸化テトラブチルアンモニウムの溶液に対し、塩化ユウロピウムとチタンイソプロポキシドの混合溶液を添加し、十分に撹拌後、生成したアルカリ性コロイド溶液の中性化と脱塩を行うことにより、無機ナノシート溶液を得た。蛍光スペクトル測定により、得られた無機ナノシート溶液が蛍光性を有することを確認した。次に、酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を、合成した蛍光性無機ナノシート(Eu-TiOx)と弱酸性溶液下において混合したところ、茶褐色の粉末が析出し、Eu-TiOx/HRP複合体が形成されたことが確認できた。Eu-TiOx/HRP複合体の蛍光スペクトルを測定したところ、Eu-TiOx単体よりもやや短波長側(500~600nm付近)に、特徴的な蛍光ピークが認められた。 次に、得られたEu-TiOx/HRP複合体に対し、発色基質の存在下、生体分子の一種でもある過酸化水素を添加した時の蛍光応答について検討することにした。HRPの発色基質としてグアイアコールを選択し、この物質の共存下においてEu-TiOx/HRP複合体に過酸化水素を添加したところ、添加に伴い500~600nm付近における蛍光ピークの強度が減少した。また、この蛍光強度の減少は、添加した過酸化水素濃度と相関があった。このことから、得られたEu-TiOx/HRP複合体は過酸化水素を検出するための新規材料となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、無機ナノシートを合成し、酵素との複合体形成に関する検討を行うことを予定していた。研究実績の概要に記したとおり、本年度は無機ナノシートと酵素の複合体形成に成功し、またこれを用いた過酸化水素の検出まで行うことができたため、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HRPに加えて、グルコースオキシダーゼ(GOx)を加えた、無機ナノシート/HRP/GOx複合体を作製し、これを用いたグルコース検出系を構築することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は予定していたよりも薬品の必要量が少なく、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、グルコースオキシダーゼを含有した複合体を用いた蛍光検出系を構築することを目指すため、酵素を含めた生化学試薬を中心に、主に消耗品費として研究費を使用することを予定している。
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