最終年度である本年度は、まず分光蛍光光度計の燐光モードを使用し、ユウロピウムをドープした蛍光性無機ナノシート(Eu-TiOx)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、グルコースオキシダーゼ(GOx)から成る複合体を用いたグルコース検出の検討を行った。分光蛍光光度計の燐光モードによりEu-TiOx/HRP/GOx複合体の発光スペクトルを計測したところ、ユウロピウムに由来する特徴的なピークが観測された。次に、発色基質であるグアイアコールの存在下、Eu-TiOx/HRP/GOx複合体にグルコースを添加すると、当該ピークにおける発光強度の減少が観測された。添加したグルコース濃度と発光強度の減少率との間には相関関係が見い出され、本手法のグルコース検出における有用性が示された。 そこで、次に、多検体処理にも適したマイクロプレートリーダーを使用して、時間分解蛍光測定に基づくグルコース検出を試みた。グアイアコールの存在下、Eu-TiOx/HRP/GOx複合体にグルコースを添加したところ、616nmにおける発光強度の減少が観測された。また、添加したグルコース濃度と発光強度の減少率との間には相関が見い出され、本手法がグルコース検出法として有用であることを確認できた。 研究期間全体を通じた成果として、まず液相法によりEu-TiOxを合成し、これとHRPから成るEu-TiOx/HRP複合体が過酸化水素の光検出に有用であることを確認した。また、HRPに加えてGOxをEu-TiOxに複合化させたEu-TiOx/HRP/GOx複合体が、グルコースの光検出に有用であることを明らかとした。従って、無機ナノシートであるEu-TiOxを、生体分子の一種でもある過酸化水素とグルコースの光検出に応用可能であることが示された。
|