研究課題
本研究は,現場で,誰もが,簡便かつ迅速に感染症の検査が可能な小型で安価な分析システムを開発することを目的としている。すなわち,コンパクトディスク(CD)型のマイクロチップを作製し,マイクロチップ上のリザーバー内の試料溶液を,遠心力を利用してマイクロチップ内の分離・検出チャンバーに送液し,抗原抗体反応を利用して試料中の目的成分を分離した後,小型でポータブルな蛍光検出器を利用して分離した成分を検出する新規分析システムを開発し,これをウイルス抗体検査に応用しようとするものである。平成27年度は,我々がこれまでに開発してきたCD型マイクロチップとは異なる新しい流路デザインのCD型マイクロチップを作製し,チップを回転させたときにそれぞれのリザーバーから溶液が流れ出す回転速度を理論と実験の両面から検討した。その結果,CD型マイクロチップの回転速度を段階的に増加させていくことにより,回転半径の大きな円周側のリザーバーから順番に溶液を分離・検出チャンバーに送液することに成功し,送液の再現性についても従来のデザインに比べて向上させることができた。また,有機ELと有機フォトダイードを真空蒸着法により作製し,これらを光源と光検出器とする小型でポータブルな新規蛍光検出システムを開発した。レゾルフィンをモデル試料として用い,開発したシステムの性能評価を行ったところ,良好な直線性を示す検量線が得られ,従来法と同等の感度,再現性で測定できることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は,新しい流路デザインのCD型マイクロチップとチップを回転させるためのターンテーブルを開発し,チップの回転により生じる遠心力を利用してリザーバー内の溶液を分離・検出チャンバーに送液する方法を検討した。これにより,送液の再現性を従来よりも向上させることができた。また,発光材料としてIr(ppy)3を用いたりん光有機ELデバイス及び銅フタロシアニンを光電変換層とする有機フォトダイオードデバイスを作製し,これらを光源と光検出器とする小型の蛍光検出システムを開発した。開発した蛍光検出システムの性能評価をレゾルフィンをモデル試料として用いて行ったところ,従来法と同等の感度,再現性で測定できることが確認された。以上のように,研究は当初の計画通り順調に進展している。
平成28年度は,CD型マイクロチップに抗体を固定化する方法を検討する。すなわち,固定化方法として物理吸着のほか,シランカップリング剤などを用いる化学修飾について検討し,固定化の再現性が良好で,測定チャンネル間の固定化密度が均一になるような固定化条件を明らかにする。次に,イムノグロブリンA(IgA)をモデル試料として,開発した分析システムとマイクロチップを用いる酵素免疫測定法(ELISA)の検討を行う。試薬濃度,反応時間,ブロッキング試薬の種類など測定条件の最適化を行い,感度,再現性等を従来の96穴マイクロタイタープレートを用いるELISAと比較する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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