研究課題
平成29年度は,PDMSと活性炭を用いて小型の遮光性9穴マイクロタイタープレートを作製するとともに,LEDとフォトダイオードを用いるバッテリー駆動が可能な手のひらサイズの蛍光検出器(プレートリーダー)を作製した。これらを用いて,ELISA法による麻疹および風疹に対する抗体価検査を検討したところ,市販の96穴マイクロタイタープレートとデスクトップサイズのマイクロプレートリーダーを用いる従来法と一致した検査結果が得られた。また,前年度までに開発したCD型マイクロチップを用いる分析システムでは,検出時にチップの回転を停止させる必要があったので,CD型の電子回路基板上にバッテリー,電源,光源,検出器,アンプ,データ処理器等を集積化し,これをCD型マイクロチップと一体化して回転させることにより,CD型マイクロチップを回転させたままリアルタイムに測定することが可能な分析システムを開発した。このシステムを用いてグルコースの定量を検討した。即ち,検出チャンバーの内壁にHRPとGlucose Oxidaseを固定化したCD型マイクロチップを作製し,Amplex Redを含む種々の濃度のグルコース水溶液をチップ上のリザーバー内に導入した。このチップを回転させてリザーバー内の試料溶液を検出チャンバーに送液し,酵素反応により生成したレゾルフィンの蛍光強度を測定することによりグルコースの定量を行った。その結果,チップを回転させると蛍光強度が時間経過に伴って徐々に増加することが確認され,開発したシステムによるグルコースの全自動リアルタイム測定に成功した。以上のように,本研究では3年間で,現場で,誰もが,簡便かつ迅速に感染症の検査が可能な小型で安価な分析システムの基盤技術を確立することに成功した。
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