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2016 年度 実施状況報告書

水素ラジカルに対する有機材料の耐性・劣化の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 15K05545
研究機関横浜市立大学

研究代表者

高山 光男  横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (10328635)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード水素ラジカル / 有機材料 / 質量分析
研究実績の概要

平成28年度以降の計画:プロトタイプ水素ラジカル発生器の性能評価と水素ラジカル感応性の有機材料への水素ラジカル照射
上記計画に沿って、水素ラジカル発生器の性能確認を実施した。平成27年度までに水素ラジカル生成の証拠として、フッ素系樹脂からの水素ラジカルによるフッ素引き抜き反応生成物であるフッ化水素HFの生成を、負イオン大気圧コロナ放電質量分析によって確認している。その際、フッ化水素由来のイオンピークの同定は未実施であったので、論文執筆を目的として、各観測ピークの衝突誘起解離(CID)実験を実施し、フッ化水素と大気イオンとの複合体形成物の同定解析を実施した。その結果、以下の複合体の形成を確認できた。
1.スーパーオキシド(O2)-を核としたHFクラスターの生成、2.フッ素イオンF-を核としたHFクラスターの生成、3.ギ酸イオン(HCOO)-を核としたHFクラスター生成

上記の各種クラスターの同定と分解特性まで精査できたので、今後、本成果に基づいた論文執筆を行う。また、上記の水素ラジカル発生器と水素原子発生の確認方法は新規技術として特許申請を行っているが、本機器の実用化と利用分野を探索することを目的として、技術系企業と大学知財のマッチングを目的としたテクニカルショウ(横浜、2月、2017年)に本製品を紹介出品した。現在、引き合いのあった企業との共同研究の可能性を模索している。さらに、上記計画に沿って、水素ラジカルに対して脆弱性を示すと考えられるアラミド系ポリマー材料(ケブラー等)への水素ラジカル照射実験まで行ったが、得られたスペクトルデータからは、分解を示唆する結果は得られなかったことから、さらに同様の実験を継続している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

水素ラジカル発生器の性能評価の一環として、大気圧下で生成した水素ラジカルの寿命と関連する空間的移動距離を評価する実験系を組み立て、少なくとも140mmの空間を移動し得ることを確認した。本結果は、空間的に有意に離れた位置まで気体状水素ラジカルを移動させ、有機材料等の被検体に照射できることを示している。また、大気圧下で生成させた水素ラジカル由来の反応生成物であるフッ酸HFを検出する際、負イオン大気圧コロナ放電イオン化質量分析を使用したが、フッ酸HFと相互作用し複合体イオンを形成できる大気イオン種を知ることができた。すわわち、水素ラジカルの生成を直接に証明するには真空中でのレーザー照射イオン化が必要であるが、本法では、間接的ではあるものの、大気圧下でのイオン反応を利用して簡便に検出し得る手法として上記質量分析法が極めて有用であることが判明した。さらに、大気圧イオン化に続く衝突誘起解離(CID)法を援用することにより、大気イオンと水素ラジカル由来生成物との間のプロトン移動反応といった気相中での反応素過程まで調べうることが分かった。
また、水素ラジカルに対して脆性を示すと考えられたケブラー等のアラミド系ポリマー材料での照射実験まで実施できた。本材料の分解を確認するための実験結果の解析はまだ不十分であるが、29年度も継続して有機材料への照射実験する予定である。予備解析ではあるが、極めて密な分子内水素結合ネットワークを形成しているケブラー材料は、水素ラジカルの照射に対しては強い耐性を有することが示唆された。今後、照射条件等を検討することで、さらなる検討材料を出してゆく。

今後の研究の推進方策

これまでの水素ラジカル発生を示す実験結果に対しては、さらに多角的な証明を得る必要があると考えている。すなわち、プロトタイプの水素ラジカル発生器に使われている材料や種々ガス種の流路や紫外線発生ランプの到達領域など、精緻な確認が必要である。特に、フッ化水素HFの生成は確実であるものの、その生成機構と関連したフッ素引き抜き反応の場は、原子・分子レベルではまだ未確定である。これまでの成果の論文発表や学会発表はもちろんであるが、有機材料への水素ラジカル照射実験と平行して、水素ラジカルと有機材料等との相互作用や反応特性の基礎検討を継続する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Ionization Capabilities of Hydronium Ions and High Electric Fields Produced by Atmospheric Pressure Corona Discharge2016

    • 著者名/発表者名
      N. Sato, K. Sekimoto, M. Takayama
    • 雑誌名

      Mass Spectrometry (Tokyo)

      巻: 5 ページ: 1-7

    • DOI

      10.5702/massspectrometry.S0067

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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