研究課題
研究期間内に実施したことは、ナノリットル体積への収束を可能にするCEオンライン濃縮とESI-MS検出を結合した、DNA中の損傷ヌクレオチドの高感度検出法の基礎をほぼ確立したことである。生体内における膨大な正常体の共存下でのごく微量の損傷体の検出は、分析化学にとってチャレンジングなターゲットであると同時に、損傷体は個人の発がんリスクマーカーとして非常に重要なターゲットである。「損傷部位」を基質とする酵素の検索、前処理を含めた総合的な手法の整備も行った。すなわち、オンライン濃縮法として過渡的等速電気泳動の仕組みを持つ動電過給法(EKS)を用いて条件を最適化し、飲酒由来のdGMP損傷体2種について、1 mLの試料溶液から1ステップで3000倍の濃縮を達成した。さらに、導入部の構造の改良で導入効率を上昇させて前濃縮過程と組み合わせることで1万倍まで倍率を向上した。また、ヌクレオチドはESI-MSでの検出効率が塩基、ヌクレオシドに比較して10%程度と低いため、EKS濃縮との一連の過程で、オンラインでの亜鉛錯体化過程を組み込み、15倍のイオン化効率向上を実現した。一方、損傷塩基を定量的に「錯体化に適した」5’-ヌクレオチド体に分解する酵素の検索を行い、ヌクレアーゼBal31が極めて優秀であることを見出した。モデル損傷DNAから、Bal31による酵素反応前処理を行い、本法での、実分析に近い状況での、損傷塩基の検出に成功した。以上の27、28年度の結果をもとに、29年度は、詳細な圧力流の条件、電圧条件を最適化し、分析者の経験に頼ることなく、ESI-MSとの接続による陰圧下という複雑な条件下において高い再現性で高い濃縮効率を達成できる本手法の自動プログラムをほぼ完成した。一方で、MS用の内部標準物質としてD化損傷体2種の調製に成功した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Analytical Sciences
巻: 印刷中 ページ: 未定
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分析化学
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