研究課題
ATPなどのリン酸化合物を特異的に認識する超分子複合体センサーを開発することが、本研究の目的である。シクロデキストリン(CyD)が持つナノサイズの疎水空間を利用し、水に不溶なジピコリルアミン金属錯体を複数包接させることにより、リン酸化合物、特にATPの選択的多点認識を目指すものである。平成27年度はアゾプローブを5種作成し、①測定条件の最適化、②金属配位/リン酸結合能の評価、③結合定数の算出を中心に、その評価を実施した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、「金属イオン・リン酸誘導体の認識機能評価」を目的とし、①測定条件の最適化、②金属配位/リン酸結合能の評価、③結合定数の算出を実施していった。プローブ分子は既報を基に、特に色調変化をもたらすアゾベンゼン骨格部位の置換基を換えたものを5種合成し、紫外-可視吸収スペクトルおよび円二色性スペクトルによる誘起円二色性(ICD)効果(シクロデキストリン(CyD)由来のキラル場近傍でアゾ基が空間的に相互作用して発現する効果)を測定した。①については、CyD包接条件下、DMSO1-2%―水99-98%で測定できることがわかり、以下の測定では条件を固定した。②③については数種の遷移金属イオンについて測定を行い、特に亜鉛イオンと銅イオンについてプローブ-金属間結合定数が高いことがわかった。CyDとの包接定数については現在検討中である。
本年度は、主にCyD包接場効果の検討を「①サイズの影響」と「②修飾基の効果」の2つの観点から行う。①については、環状グルコースであるCyDの構成分子数を変えた数種のCyDに対する包接・応答挙動を詳細に調査し、特にγ-CyD(グルコース8分子で形成される)におけるプローブ2分子包接挙動の有無あるいはプローブ間相互作用を確認する。状況により蛍光性プローブを用い、ダイマー/エキシマ-蛍光により評価を行うことについても検討する。②については、アミノ基やジピコリルアミノ基を持つCyDを合成し、アゾプローブを包接させて、その応答を①と同様に各種分光測定法を用いて評価する予定である。これら当初の計画に加えて、次の2項目についても検討をしていく予定である。③プローブの分子設計の見直し:分子認識部位であるジピコリルアミノ基を複数持つプローブ分子を合成し、これまでのプローブとの金属イオン/リン酸イオン誘導体との認識機能を比較していく。あるいは、プローブをCyDに直接共有結合で繋げた一分子型プローブについてもそのリン酸イオン誘導体認識機能について評価を実施していく予定である。④デンドリマーを用いたプローブの高分子化:デンドリマーは樹木状高分子であり、プローブを複数柔軟な構造で(しかもある程度制御された形で)連結することが出来る。デンドリマーの世代(大きさ)、プローブの修飾率に対して、リン酸誘導体応答がどのように変化するかを中心に調査していく予定である。これは当初平成29年度の実施を予定していたが、一部前倒しで行う。
実験計画立案当時に購入を予定していた器具・試薬の使用量が予想以上に少量で済み、それでも必要な成果を出すことが出来たため。
当初計画を見直したうえで、主に消耗品(試薬・器具)の購入に用いる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.mls.sophia.ac.jp/~analysis/index.html