研究課題/領域番号 |
15K05548
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 准教授 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子認識 / 超分子化学 / ジピコリルアミン / リン酸化合物 / シクロデキストリン / 化学センサー / アゾ化合物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ATPなどのリン酸化合物を特異的に認識する超分子複合体センサーを開発することにある。シクロデキストリン(CyD)が持つナノサイズの疎水空間を利用し、水に不要なジピコリルアミン金属錯体を複数包接させることにより、リン酸化合物、特にATPの選択的多点認識を目指すものである。平成28年度は主にCyD包接場効果の検討を「①サイズの影響」および「②修飾基の効果」の2つの観点から実施した。 ①については、環状グルコースであるCyDの構成分子数を変えた3種のCyDに対する包接・応答挙動を詳細に調査した。特にグルコース8分子で構成されるγ-CyDにおけるプローブ2分子包接挙動の有無及びプローブ間相互作用について、電子スペクトル挙動による調査を行った。更に、昨年度作成したアゾプローブのシクロデキストリン複合体の包接構造について二次元NMRを中心して詳細な検討を行った。 ②については、アミノ基をもつ修飾CyDの包接挙動について、①と同様に二次元NMRスペクトルを中心とする詳細な検討を行った。更に、ジピコリルアミノ基を持つアゾプローブをCyDに修飾し、ジピコリルアミンとCyD空洞を利用した包接との2か所の相互作用により、ATP選択的な系を構築することに成功し、報文として完成することができた。 さらに、末端がアミノ基である水溶性デンドリマーの一部の末端にジピコリルアミノ基を持つアゾプローブを修飾した樹木型プローブを合成し、その金属イオン認識能及び金属錯体のリン酸類誘導体認識挙動についても調査を実施し、世代や修飾率に対する応答能に関する知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に引き続き、平成28年度も申請計画に基づく4つの課題(①CyD包接場のサイズの影響②修飾基の効果③多点認識部位を持つプローブの導入④デンドリマーを用いたプローブの高分子化)について、順調に研究を進めることができた。但し、③の課題については、合成段階で克服できない箇所があり、平成29年度は研究方針を見直しながら課題解決を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も申請計画に従い、平成28年度と同様に4つの観点から課題に関する研究を進めていく。具体的には以下のとおりである。 ①CyD包接場のサイズの影響:昨年までの研究でのデータ不足分を補うとともに、ゲルや修飾CyDに関しての知見を深めていく。 ②修飾基の効果:特にATP選択性が見られたジピコリルアミノアゾプローブ修飾CyDについて、選択性が発揮する原因を、特にNMRスペクトルを中心とする解析を行う。 ③多点認識部位を持つプローブの導入:分子認識部位であるジピコリルアミノ基を複数持つプローブ分子を合成し、これまでのプローブとの金属イオン/リン酸イオン誘導体のとの認識機能を比較していく。 ④デンドリマーを用いたプローブの高分子化:昨年に引き続き、柔軟な骨格を持ち、均一な形状で大きさや末端置換基の数を制御できるポリアリアミンデンドリマーを用いたアゾプローブを合成し、そのリン酸認識能についての評価を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画立案時に購入を予定していた器具・試薬の使用量が、年度末の研究室移転に伴う実験期間の減少により、予想使用量より削減されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
移転後、速やかに研究室の再立ち上げを行い、当初予定していた試薬・器具類の購入に用いる予定である。
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