研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、シクロデキストリンとジピコリルアミン基を持つ金属錯体プローブをモチーフとして、1)シクロデキストリン修飾分子系 2)シクロデキストリン包接化合物系の2つの系それぞれで研究を遂行した。 1)の修飾分子系においては、プローブにアゾ化合物および蛍光物質を導入した金属配位ジpピコリルアミン修飾型分子の分光学的挙動を調査し、ATPに対しリン酸ー金属間の配位・アデノシン部位のシクロテキストリン空洞への包接・さらにはリン酸側鎖とプローブ分子の弱い相互作用を含めた多点での認識により、1分子系でありながらATP,ADPに選択的に応答を示す化合物の開発に成功し、これらの成果を雑誌論文として発表することができた。 2)の包接系においては、プローブ分子ののレポータ部位であるフェニルアゾ基とレセプター部位であるジピコリルアミンのスペーサー長をアルキル鎖の数で調節することで、金属イオンに対する分光学的応答が大幅に異なることを明らかにした。さらに、プローブの末端をアルキルからニトロ基に変化させると、その包接構造が大きく変化し、マンガンイオン選択性の応答が得られた。現在、この金属イオン選択性の変化の原因について、分光学的および結晶学的な実験からの考察を試みているところである。また、ジピコリルアミノ基だけではなく、フェニルボロン酸も用いたATP選択的包接化合物の系について、その分子設計と合成実験、予備測定を開始している。
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