石油燃料をベースとした火力発電や核エネルギーを利用した原子力発電に代わるクリーンエネルギーの第一候補として太陽電池開発への期待はさらに高まっている。現在実用化されているシリコン系太陽電池は、生産のためにエネルギーコストがかかり、トータルのエネルギー効率を考えると問題がある。そこで、次世代の太陽電池として期待されているのが増感型太陽電池(SSC)と有機薄膜太陽電池であり、これらの開発が急務である。 光を増感剤に吸収させて電気エネルギーに変換する増感型太陽電池において、効率を決定づける電子移動のプロセスは、多孔質半導体/増感剤/電解質のナノ構造界面で起こる。近年、我々が開発した過渡格子法により、電池内での電子の失活過程の一つである、電解質イオンによる電子の再結合過程を選択的にとらえることに成功した。本研究では、この方法と過渡吸収分光法を組み合わせて、太陽電池効率を下げる主要因である電子の再結合過程を特定できる分光分析方法を提案した。 励起パルス光を液晶変調器により複数の回折次数に分割する。レンズを通して、対物レンズの後側焦点に集光した後、対物レンズに導入して、進行方向の異なる平行光として干渉させることでXY方向の干渉パターンを試料上に形成する。太陽電池や光触媒などの光デバイスに照射することで、光励起キャリヤを生成して、そのキャリヤの伝搬や失活過程を、Shchlieren法によりイメージングできる装置を開発した。 時間分解能5ns、空間分解能1umの顕微分光測定法の開発に成功し、現在、様々な光デバイス中での光励起電子の寿命や運動性について、デバイス構造との相関を調べる段階に達している。今後、様々な光デバイスに適用することで、光電流変換・光反応変換効率の高い光デバイス作成につながるものと期待される。
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