研究課題
最終年度である平成29年度は、前年度までに見出した「穏和なpH制御により水溶性ホウ素の定量的な捕集・脱着が可能なキレート配位子-陽イオンハイブリッド機能樹脂」について、再現性よく優れた機能を発揮できる樹脂を合成するための最適条件を検討した。その結果、機能部位を化学修飾法により導入する場合、先に対陽イオン部位を導入した後、キレート配位子部位を導入するほうが、逆の導入順序よりも優れた捕集能を有する樹脂となることがわかった。また、化学修飾する際の溶媒・温度条件について最適化した結果、pH10程度以上で最大となるホウ素の捕集能が市販のホウ素除去用樹脂と同等以上で、かつpH2程度でホウ素を定量的に脱着する樹脂を再現よく合成することができた。一方、本研究申請当初に計画していた共重合によるハイブリッド機能樹脂の開発について、前年度に引き続き検討を進めた。その結果、各機能部位を有するモノマーの合成では、可能な限り禁水条件下で合成反応を進行させる必要があることがわかった。また、機能部位のモノマーのみを共重合させると、極めて吸湿性の高いゲル状高分子となり、分離用樹脂に求められる固相としての性質を保持できないことがわかった。したがって、モノマーの共重合によるハイブリッド機能樹脂の開発においては、樹脂担体の性質を保持するために、スチレンやジビニルベンゼンなどのモノマーを一定量添加した上で、機能性部位のモノマーを共重合させる必要があることがわかった。以上、本申請課題では、キレート配位子と陽イオンの両方の機能部位を有する高次機能化樹脂の開発を通じて、従来のホウ素除去のみならず、ホウ素の分離と回収の両方に資する新たな機能性材料を創出するとともに、さらに優れた高次機能化樹脂の開発に対する課題を具体的に見出した点で一定の成果が得られたと考えられる。
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甲南大学紀要 理工学編
巻: 64 ページ: 17-28