研究実績の概要 |
今年度は、以下の五つの観点から研究を行った。 1. これまでに検討してきたイオン液体塩橋を挟む電池の起電力の再現性は、95%信頼区間で 0.5mV 以上ある。その原因を追求した。イオン液体塩橋中のイオン液体が測定時間とともに減少する。これに伴い、試料溶液側から参照電極の内部液に水が浸入することにより、内部液の電解質濃度が減少することを見いだした。塩橋の長期使用を避けることにより、再現性が95%信頼区間で 0.3mV以内に向上した。 2. イオン液体塩橋への水の侵入を防ぐためにイオン液体塩橋相をより疎水性にすることが有効であると考えられる。trihexyltetradecylphosphonium chloride ([THTDP+][Cl-]) とsodium tetrakis[(3,5-trifluoromethyl)phenyl]borate ([Na+][TFPB-])から、疎水性が極めて高い[THTDP+][TFPB-]を合成した。[TBMOEP+][C2C2N-]と混和後、ゲル化イオン液体塩橋を作成した。電位の時間的安定性は向上したが、繰り返しの再現性は従来と同程度にとどまった。 3. 本研究では、ゲル化[TBMOEP+][C2C2N-]参照電極を作用電極として用い、TBMOEP+の塩化物水溶液を C2C2N-のリチウム塩水溶液で電位差滴定することにより、高純度の[TBMOEP+][C2C2N-]を得る新しいイオン液体合成法を創案し、実証した。 4. [TBMOEP+][C2C2N-]を塩橋とす参照電極を基準としたイオン液体中の電気化学の標準電位は、水溶液中の標準水素電極基準の電位に一義的に変換できること実証した。 5. pH 高精度測定の根幹に関わるpH可測性の概念的および歴史的検討を行い、おもに R. de Levieとの論争を通じて、その基盤を確立した。
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