研究課題/領域番号 |
15K05554
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保木 芳徳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 名誉教授 (00014001)
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研究分担者 |
田中 俊逸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任教授 (30142194)
戸倉 清一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 名誉教授 (40000806)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チタン結合性蛋白 / 人工歯根 / 人工骨 / チタン骨内定着 / 骨シアロ蛋白 / リン酸化セリン / RGD細胞接着配列 / リン酸化キチン |
研究実績の概要 |
1950年代にチタンと骨が強固に結合するという驚異的現象が偶然発見されて以来、チタンは人工歯根・人工関節に広く用いられるようになった。しかしなぜチタンが生きた骨に結合するかの生化学的メカニズムは証明がなかった。そこで、私たちはチタン・クロマトグラフィーを開発してチタン結合蛋白質を系統的に検索した結果、カゼイン、フォスビチンなどの高リン酸化タンパク質のみがチタンに強く結合することを発見し(BioMed Mat Eng, 22: 283-288, 2012)、さらにウシ骨の非コラーゲン性マトリックス蛋白質がチタンに結合することを発見した。のみならず骨のチタン結合蛋白(TiBP)を、チタン製デバイスにコートして、ラットの頭頂骨内に埋植した結果、1週後の新骨形成量が、非コートTWの100倍以上高くなった(BioMed Mat Eng, 24: 1539-1548, 2014)。ウシ骨のTiBPには、象牙質マトリックス蛋白質1(DMPI)、骨シアロ蛋白、オステオポンチンなどの、いわゆるSIBLING蛋白質ファミリーが存在し,何れも多数のセリンリン酸を含む他、1個の細胞接着配列RGDを含むので、骨形成と石灰化に重要な役割を持つことが認められる。これらの骨のSIBLING蛋白質がチタンに結合するという今回の発見は、チタンがなぜ生きた骨と結合するかという長年の謎に解答を与えると考えられる。今回は、この生化学的メカニズムに基づいて、骨のリン蛋白質の代用として、リン酸化チキンを調製したところ、リン酸化キチンがチタンに結合する事を見出した。リン酸化キチンにRGDを含むペプチドを縮合する計画を進行中、リン酸化キチンとチタンの複合体そのものに、骨増生能が観察された。この結果、リン酸化キチンの新しい機能として、チタン・インプラント骨形成に役立つ新しいスキャフォールになる道が開かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、キチンをリン酸化してから、さらにRGD細胞接着配列を持つペペチドををリン酸化キチンに縮合して、骨増生に対する効果を調べる予定であった。ところが、リン酸化したキチンそのものをチタンにコートしてラットの骨内に埋植したところ、それだけで明らかな骨増生効果があったという予想以上の結果に遭遇した。
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今後の研究の推進方策 |
キチンをリン酸化した結果、リン酸化キチンはチタン結合性を獲得し、さらにリン酸化キチンをチタンデバイスにコートしてラットの頭蓋骨に埋植すると、2週間後に非コート対照群と比較して明らかに増加した。この事実の臨床的有用性は勿論であるが、さらに進んで一般的に、ある種のリン酸化高分子は、たとえ接着ペプチド縮合されていなくても、骨造成能を獲得する可能性を示唆するものである。そこで、コラーゲンまたはそのペプチドのリン酸化物、あるいはカゼインペプチドン等自身が、チタンに結合された場合に、骨増性能が高めるかどうかを検討することにした。この結果が予想通りであれは、コラーゲンを用いる点で、臨床的応用価値は一層高まることになる。そこでこの新しい実験を、予定通りのリン酸化キチンにRGDペプチドを結合する実験と並行し行うことにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の計画が予想以上にし早く進行し、使用額の残余を生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度請求した分に加えて、新計画(コラーゲンまたはそのペプチドのリン酸化と骨造成能の検討)を追加し、従来予定の計画と並行して進めるために使用する。
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