研究課題
平成27年度はリン酸化ミミックAlF4-を用いたSer/Thrホスファターゼの基質トラップ法の有用性確認を実施した。まず、Ser/ThrホスファターゼとしてPPMタイプのPPM1D430、ならびにSCP/FCPタイプのヒト由来SCP1およびFCP1について、大腸菌発現システムを用いて発現・精製を行った。pNPPならびにリン酸化ペプチドを用いた速度論的解析を実施し、発現したすべての組み換えタンパク質がホスファターゼ活性を有することを確認した。次に、AlF4-イオンによるホスファターゼ阻害活性を確認したところ、SCP1, FCP1はAlF4-添加により顕著に活性が阻害され、PPM1D430においても弱い阻害活性が認められた。これらのことから、AlF4-がリン酸化ミミック分子として組み換えタンパク質にトラップされることが示唆された。立体制約型ファージライブラリーの構築は、フィブロネクチン由来構造を導入したファージミドベクターを構築し、現在クローニング中である。そこで、最初に基質同定のためのスクリーニングの系を確立するため、7残基提示の立体制約型ファージライブラリーを用いてFCP1ホスファターゼに対する基質モチーフ探索実験を実施した。AlF4-存在下、FCP1結合ファージをスクリーニングし218個の塩基配列を解析したところ、9種類の集積した配列を同定した。、これらの配列の中には機知のFCP1基質配列であるPolII CTDドメイン類似配列を含んでおり、本手法がSer/Thrホスファターゼ基質同定法として有用であることが強く示唆された。また、Ser/Thrホスファターゼの基質トラップ型変異体についてはPPM1D430を用いて作製し、これまでに高純度で発現精製することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画であるin vitro ホスファターゼ基質トラップスクリーニング法の有用性を確認できた。また、立体制約性ライブライブラリーの構築、ならびに基質トラップ型変異体の作成も当初計画に従った展開をしている。また、学会での成果発表等も実施している。
作製した独自の立体制約型ファージライブラリーを用いて、より結合力の強いSer/Thrホスファターゼ基質候補ペプチドを同定する。同定したペプチド配列含有タンパク質をタンパク質データベースより探索し、実際に生体内標的分子として機能するかどうか検証する。また、得られた結合配列をもとに、Ser/Thrホスファターゼ阻害剤への展開を行う。また、基質トラップ型変異体を用いた、細胞内基質の同定を行う。
研究で使用するマイクロプレートリーダーが当初計画予算より低価格で購入できたため、また、研究の進行が概ね順調であったため、経費節減により次年度使用額が生じた。
経費節減の結果生じた使用残について、より一層の研究推進ため物品費および旅費等に有効に使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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