研究課題/領域番号 |
15K05563
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 勇太 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 助教 (60580115)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光誘起電荷分離分子 / 細胞内酸化還元現象 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、光誘起による酸化還元を起こす分子の設計と合成、初期検討を行った。合成にとりかかった分子の内訳としては、(a)カチオン性置換基を複数個導入した両親媒性フェロセンーポルフィリンーフラーレン連結型分子、(b)9-メシチルアクリジニウム分子をベースに、水溶液中での分子凝集による光誘起電荷分離効率の低下を防ぐ目的で、ドナー部位あるいはアクセプター部位にそれぞれかさ高いアルキル基を導入した分子、(c)分子ドナー性を高めるためにトリアリールアミン部位を用いた分子である。さらにフラーレンの特異な電子的磁気的性質を細胞内での酸化還元分子機能発現に応用展開するため、(d)セリウム原子を内包したフラーレンについても誘導体合成を行った。 これらのうち(a),(b),(d)については合成が完了した。(a)では基礎的な物性解明と細胞内での分子性能評価を行った。結果、当初目的の細胞内小器官への到達は見られなかったが、細胞膜内にて従来にない高効率で光有機電荷分離状態を発生させられることが明らかとなった。(b)および(d)は、今後詳細に分子機能性を解明する予定である。また(c)についても、分子合成の終盤段階であり完成間近である。また一方、本研究のベースとなった両親媒性フェロセンーポルフィリンーフラーレンについても本研究の一環として以前から引き続き物性検討を行い、その結果Chemical Science誌における成果発表に至った。 今後は、大きな構造を有する分子については薬物送達キャリアを利用した分子の細胞小器官への送達を検討する。併せて(b)(c)(d)などについても、細胞系への応用を指向した分子性能試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、複数の分子を新規に設計・合成し、前述の通り幾つかの分子については合成完了し、性能検討段階に入っている。また、ここから得られた知見を基に、分子改良や細胞への導入検討を行えており、本研究は順調に進行している。前述(a)(d)の分子については、現在その研究成果をまとめ、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在合成の途中段階である(c)トリアリールアミン骨格を有する分子の合成を完成し、分子性能評価を行う。具体的な検討内容として、(b),(c)などの9-メシチルアクリジニウムを鍵分子とした分子系については、細胞内での動態と、細胞内における酸化還元反応の誘起能を評価する。また、両親媒性フェロセンーポルフィリンーフラーレンについては、ミトコンドリア指向性薬物送達キャリアへの搭載検証が完了し利用可能性を確認済みであるため、今後は各種細胞実験によって細胞内での動態と、ミトコンドリア中での酸化還元反応の誘起能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は試薬購入費と器具等購入費が想定より低く抑えられた。これは、コストがかかる細胞を利用した実験量を当初計画より減らし、代わりに有機化学的な合成実験に重点を置いたためである。また、旅費の支出が無かったことも、使用額減少につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本年度の実施を先送りにした細胞実験を重点的に行い、当初計画に沿った研究費使用を行う計画である。
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備考 |
ホームページ内「Publication」「最近の論文から」に本研究成果の記載あり。
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