研究課題
ヒドロゲナーゼは、水素酸化及び水素発生反応を行うことができる金属酵素であり、その優れた機能を水素利用技術へと応用する研究が大変注目されている。しかし、ヒドロゲナーゼは酸素暴露後に失活するという問題点がある。我々は今まで、「酸素耐性」を示す新規ヒドロゲナーゼの探索と、その生化学的な特性とタンパク質結晶構造解析を行っている。実際、阿蘇くじゅう国立公園から通性嫌気性細菌Citrobacter sp. strain S-77株を単離した。本新規細菌S-77株から「高水素酸化活性と高酸素安定性」の両特性を併せ持つ新規「NiFe」ヒドロゲナーゼ([NiFe]S77)を細胞膜から精製し、その生化学的な特性解析を行った。また、その精製酵素を用いた固体高分子型水素燃料電池(PEFC)の創製を行い、水素酸化反応において本酵素が白金を遥かに超える優れた触媒性能を示すことを世界で初めて実証した。現在、我々は本S-77株の全ゲノムの解析(約5.2 Mbp)に成功し、本細菌には二種類の異なった酸素安定性「NiFe」ヒドロゲナーゼの存在を確認している。ゲノム解析の結果によって、本新規[NiFe]S77には既存のヒドロゲナーゼとは異なる鉄硫黄クラスターの存在が予測されることから、その詳細な構造と機能の解析を行っている。これまでの研究結果から、「NiFe」ヒドロゲナーゼの酸素安定性には電子伝達機能を示す小サブユニットが重要な役割をしていると考えられる。現在、ゲノム解析から得られた遺伝子配列から、ヒドロゲナーゼの水素活性化と酸素耐性について分子系統解析も行っている。本研究においては、平成29年度以後の研究計画であった [NiFe]S77のタンパク質結晶化にも成功し、その詳細なX-線結晶構造解析を進行している。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究においては、平成29年度以後の研究計画であった [NiFe]S77のタンパク質結晶化を成功した。現在、その詳細なX-線結晶構造解析にも挑んでいる。
これまでの研究結果では、ヒドロゲナーゼの完全な4量体複合体酵素の精製は非常に困難であると思われる。そこで、今後ヒドロゲナーゼの電子受容体(HybBとHydA)のみを単離精製したい。また、平成29年度以後の研究計画であった [NiFe]S77の詳細なタンパク質X-線結晶構造解析にも挑みたい。
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